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インプレッサと決勝を観た [**Valentino ROSSI]

 土曜日の夜、宇都宮への道中でフロントガラスに水滴がつく。ポツリポツリと当たるしずくは瞬く間に数を増し、すぐに表面を流れ落ちるようになる。夕方、強く照りつけていた太陽が西に傾くと、涼しい風がサーキットに吹いていた。熱せられた肌が、風で少し温度を下げる。寒くはなかったけれど、一枚はおってもいいかな、と思わせるぐらいには気温は落ち着いていた。

 だけど、まさか雨が降りだすとは―。あまりの暑さに真夏の夕立の真似事か?と思いたかったけれど…。何となく。そうではない感じがした。


 ワイパーをしっかり動かさなければ困るような降り方もあれば、小雨になったりもする。宇都宮に着いて駐車場にハニーを預けるころには、ほとんどやんでいた。このまま降らないでいてくれればいい、と薄く思って部屋へと入る。テレビをつけ、パソコンの電源を入れ、食事を摂り、メールをチェックし、必要なものには返信し、ふう、と息をつく。

 motoGPオフィシャルサイトの“Team Manager 2007”に、いそいそと投票。今シーズンの私は、いくつかのレースに参加できなかったものの、投票はすべてValentino ROSSIを1位にしている。ポイント上位者には垂涎もののプレゼントが用意されているらしいが、好きなライダーが優勝しなければ当たろうが何しようが意味がない。
 単勝を買っているくせに、馬連で別の馬番を押さえるのとどこか似ている気がする。以前はその方法も取っていたけれど、資金は嵩むし、何より自分の中で矛盾が生じてしまい、ただ損しなけりゃいいや、な感覚でレースを見たくないな、と思うようになったのだった。

 けれど、今回ばかりは。Dani PEDROSAを1位にしようと思った。この2日間のダニエルさんの気合はすごかったし、勝利に対する気持ちがヴァレよりも大きいように思えたからだ。
 普段なら、決勝当日のウオームアップまでチェックして、グリッド順から予想をするが、今回は予選までの結果で考えた。
 ミシュラン勢が上位を占めるのは、いつものことだと笑われようと、揺るぎないものだった。



*****





 混雑回避と決勝日にいらっしゃる方とお会いしたい、という思いから、日曜日は余裕を持って起きだした。薄暗い空をカーテンをめくって覗く。よく見なくても雨が降っている。アスファルトは完全に濡れ、どんよりとした雲は厚い。昨日のように晴れてくれるとは思えず、気温も上がりそうになかった。
 ノースリーブは品切れだったが、短い袖のトップがあり、それにジーンズを履く。七分袖のカーディガンをはおってちょうどいい。この2日間がウソみたいな気温だ。夢のように夏の名残は去り、ひと息に秋がやってきていた。

 チェックアウトを済ませ、いくつものバッグを抱えて外に出る。タワー型の駐車場では、出庫を待つひとが何人もいる。同じところに向かうのだろう、と思いながら、マイハニー・インプレッサを迎え、出発した。


 予想外に道路は空いている。いつもなら脇に逸れ、グルリと回って近づくルートを取るところを、真っ直ぐに進んでもほとんど問題ない。すんなりもてぎ到着。ホッとひと安心も、重たい空は晴れることなく、今にも雨が降りだしそうだ。
 ガッカリした気分と肌寒さに、リクライニングを倒してしまった。時間はまだ早く、何も始まらない。

 ヤンヤンさんから到着の知らせ。メインエントランスに向かう。空はとうとう霧のような雨を零しだした。傘を差すほどではない、と思い、そのまま歩きだす。トンネルを抜け、マルチコースへ。東ゲートからグランドスタンドへの道にはすでに大勢のひとが歩いていた。
 残念ながらヤンヤンさんとお会いすることはできず、どうしたものか、と考える。途中携帯のメールに、kobabanさん発見!の報を受けていた。まだそのあたりにいらっしゃるなら、と返信し、自由席へと向かう。雨は霧雨から小雨に変わり、路面のすべてが濡れてしまった。

 座るのをためらうスタンド席に、kobabanさんと里崎さんが座っていた。125ccのウオームアップが始まり、しばらく眺める。kobabanさんは今年からケーブルテレビでレース観戦を始めたとのこと。選手の詳細などmotoGPクラス以外はよくわからないんだ、とおっしゃっていたけれど、全クラスを観るようにされていたらしい。
 そういう方にこそ、ぜひ、motoGPクラスを生で観てほしいと思う。圧倒的な違いを体感できるからだ。違い、というのは知らなければわからないことだ。



 90度コーナーの方に行ってみる、というkobabanさんと一緒に立ち上がる。里崎さんはパドックに行く予定で、そこでお開きになった。かみさまさんたちと一緒にたけっちさんが来ている、ということなので、ダメもとで連絡してみる。ちょうどよくパドック入り口にいるらしく、通りすがりに挨拶できた。
 ふなじゅんさんの指定席が90度コーナーらしい、と聞き、スタンド後ろで連絡してみたが、雨を避けてコレクションホールにいらっしゃるとのこと。それじゃあしかたないねえ、と指定席の後ろを歩き、ダウンヒルストレート半ばの簡易スタンドへ向かう。

 ヘアピンと90度コーナーを見るためには、少々苦しい位置ではあったが、V字、S字コーナーも見渡せ、目の前をマシンが駆け下りていく。ここは結構いいかもしれないね、と話をしているうちに、250ccのウオームアップが終わり、motoGPクラスの時間が近づいた。

 排気量だけでも。全く違うのだ。250ccとmotoGPクラスは比較の対象にならない。500cc時代は、こうまであからさまじゃなかったかもしれないけれど、motoGPクラスはすべてにかけ離れたモンスターマシンの集合だ。エキゾーストノートは空に轟き、アスファルトを震わせる。あの音だけは。テレビでは絶対に伝わらない。
 耳、ではなくて体が欲する音、初めてあの音に包まれたとき、どうしたらいいかわからなかった。

 グランドスタンドの方から独特の響きが聞こえてくる。近づいてくる音と色。S字を抜け、V字を通り、ヘアピンからダウンヒルストレートを真っ直ぐに下りてくるマシンに、やはり嬉しくなった。次々と現れては90度コーナーに吸い込まれていくマシン。咆哮を残して走っていく。

 「迫力が違うね」

 うんうん、とうなずきながらkobabanさんが言う。そのひと言がたまらなく嬉しかった。








 ウオームアップを雨に打たれながら観た。普段とは違う神経は、濡れても冷たさを感じさせない。けれど、帽子も肩もびしょ濡れだ。もちろん靴もすっかり水に濡れ、靴下にまで沁みている。さすがにこのままでは風邪を悪くしてしまう、と思い、一度車に戻ることにした。
 もう少し90度コーナーに近いところに行ってみる、というkobabanさんと別れ、ヘアピンを回り込み、S字前にいるインプレッサに向かう。

 車に戻り、帽子を脱ぐ。ぐっしょりと濡れて重たくなった帽子を手にして改めて雨を嘆く。カーディガンも絞れそうな濡れ具合で、着替えることにした。半袖のポロシャツを取り出し、トイレに。日焼けした肩をギリギリと擦る服が痛かったけれど、我慢して引き剥がす。
 乾いた服に着替えたら、だいぶ楽になった。靴も脱ぎ捨てたけれど、靴下だけは日数分しか持ってきていなかった。

 ハッチバックのドアを開け、クッションを縁に載せる。背もたれに自分の大きなバッグを置き、肩にヴァレのタオルをかけてS字を眺めた。濡れたカーディガン、靴下、帽子は広げてフロントシートに置いて、周囲にひとがいないことを確かめて時折エンジンをかけて乾かす。
 125ccクラスの決勝は、インプレッサと観ることに決めた。



 気がつけば、空は少し明るくなっていた。傘を持たなくても出歩けそうだ。それでもコース上には水が浮き、リアタイヤからはハデな水しぶきが上がる。雨天決行のスポーツだけに、天候はしかたないことだとしても。する方も観る方も。雨に打たれながら、ではしんどい。
 ポールポジションからホールショットを決めたマテヤ・パシーニが、一度もトップを譲ることなく走りきり、今季4勝目を挙げた。

 雨でレース時間が長引き、すぐに250ccのスタートとなる。移動するヒマもなく、そのまま観続けることにした。
 ポイントリーダーのホルヘ・ロレンツォは、初日こそトップタイムをマークしたものの、それ以降はピリッとしたところがなく、予選は3位で1列目を獲得と、帳尻は合わせてきたが、凄みを感じさせず、レースでは早々にトップ争いから後退した。

 お気に入りのアンドレア・ドヴィツィオーゾがホールショットを決め、レース序盤を支配する。史上初の日本人によるGP3連覇がかかるKTMの青山くん(兄)が、5番グリッドから一気に2番手浮上。同じオレンジ色のマシン、ミカ・カリオが続き、4番手にはアンドレアのチームメイト、高橋くんが上がる。
 少しずつ後ろを引き離し、2チーム4台のトップ争いになるかと思いきや、猛然と追い込んできたエクトル・バルベラが加わり、順位がめまぐるしく入れ替わる。

 “アンドレアが勝ってくれたら”と思っていた。ロレンツォは全く伸びず、後方でただただマシンを走らせていた。勝てるかもしれない、と思いながら、そのためには、もてぎに強いKTMをどうにかして振り払わなければならないことを考える。これはロレンツォをやっつけるより難しいことだった。
 250ccのHONDAは、どこか非力だ。特にサテライトチームである彼のマシンには、あともう一歩のキレがない。フィニッシュブローがない、というか、決め球を持たない、と言ったらいいか…。

 これまでの勝利は、何のためらいもなく、“アンドレアの腕”と言える。本人も。そのあたりは自覚しているようで、ウイニングランでは必ず自分の腕を誇らしげに叩いている。


 腕で何とかなるコースじゃないのが、もてぎだ。KTMはマシンパワーで勝り、ミカはもてぎとの相性でアンドレアを越えていた。

 青山くんの3連覇はならなかったけれど、ミカはクラスまたぎのもてぎ3連覇を達成した。125ccで連勝していた彼は、もてぎ3連覇が、250ccクラス初優勝となった。





 ** 長すぎるのでmotoGPクラスは続編で! すみませんッ


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コメント 7

HIRO

こんにちは。
雨に濡れながら...お疲れ様でした。
うちは、相方の機嫌を損ねると?不味いので?途中のコンビニで(どの道、もてぎにそう数は無いと踏んでいた)レインコートとズボンを買っていきました。
by HIRO (2007-10-04 05:51) 

里崎 知宏

>そういう方にこそ、ぜひ、motoGPクラスを生で観てほしいと思う。圧倒的な違いを体感できるからだ。
>排気量だけでも。全く違うのだ。250ccとmotoGPクラスは~
>「迫力が違うね」

全くもって同感です。僕も今年から見始めて、kobabanさんと同じくMotoGPぐらいしかわからない。
でもテレビとじゃ全然違って、やっぱ最高峰は違うと思いました。
今でもあの咆哮は忘れられず、皆さんの記事を読むたびにドキドキしてきます。
来年もものすごく楽しみですね。
by 里崎 知宏 (2007-10-04 15:02) 

のらねこ

うちは2人ともバイク用のレインスーツで観てたんで、
B席観戦でも服は大して濡れなくてよかったけど、
それでも寒くて途中で中に1枚着たんですよね。。
土曜までの炎天下に加えて、
日曜、雨に濡れて冷えたんじゃ、
体力的にもかなりキツかったんじゃないかと。
by のらねこ (2007-10-04 19:52) 

柊なお

 HIROさ~ん♪
 宇都宮はこの朝、まだ降ってなくて…。
 まあ、ワタクシ結果的に自分から濡れに行ったみたいなものなので(汗)
 例年、Z席いるの、一部時間だけなのです。ワタクシ自身は、90度コーナーだけより、いろいろ観たいので、どうしてもウロウロと。
 自分の席、があった方がいいかな、と思って取ってるんですが、今年はハニーいたし、いらなかったです。実際、ワタクシ1度も行かなかったし<Z席

 来年は指定席を取らずに、コースサイド駐車券の死守とパドックパスだなー。
 頑張りますッ

 里崎さんッ
 まずは千葉ロッテ・マリーンズ、2位おめでとう~ッ
 そしてクライマックス・シリーズ、マリンスタジアム開催、おめでとう~ッ!!!
 成ちゃんの最多勝は惜しかったけど、防御率、勝率ゲットでホッとしました。よかったー! 宏之も自身最多勝だし。うんうん。すばらしいッ

 やー、motoGP観戦、楽しまれたようで、よかったですわあ。
 興味あるものは。行けるのなら、何でもやってみる、実際に見てみる、現場に行ってみる、が一番です。それが間違いないもの。
 ワタクシ、2005年が初めてだったのだけど、その年の春からずっと観てて。motoGPクラスのスタートの瞬間、倒れてしまうかと思ったよ。あまりの凄さに鳥肌で、涙出たもん。

 去年までのマシンは今より大きかったから、音がまたすごかったのね。
 DUCATIはだいぶ静かになった気がする。もっともっと低音が轟き渡っていたのよ、もてぎの山に(笑)
 それでもやっぱり。ほかとは全然違うよね。いろんな意味でね。

 しばらくはねー、あの音が恋しくてたまらないよ。何してても忘れられなくて、思い出して。足りない、って思っちゃうんだよ。これじゃまだダメだ、って。
 飢えて飢えて。落ち着くころにはシーズンが終わって。仕切り直しになって、準備が始まるの。来年は今年以上に、早め早めに動かないとなー、と思ってます。
 楽しみだねッ!!

 のらねこさ~ん♪
 日曜日当日いらっしゃった方は、逆に装備十分でよかったと思うのですよー。雨装備して、暖かい格好で。
 金、土からいると、まさかそんな気温で、雨降りだとはッ!?な具合で。ワタクシみたいに何でもハニーに積んでればよいけど。ふなじゅんさんはかわいそうでしたわ…。

 ワタクシはホントに。自分で濡れに出てしまって(笑)
 じっとしてればよかったのにねえ。どあほうですわあ。それかウインドブレーカー着てけ、っていう。

 体力はギリギリですねえ。ハニーだと、休むのが楽でいいです。1度はオートバイで、と思うところもあるのですが、体力的にキツそうで…。根性ナシなので、荷物も多いし、たぶんmotoGPはずっとハニーで参戦しそうですわ。

 のらねこさんこそ、おつかれになったのでは…?
 来年こそは、DUCATIをやっつけなくては!!
 頑張りましょう~♪
by 柊なお (2007-10-04 22:23) 

KEO

すいません、間違いなくワタシが雨運んできました。
今年の観戦成績一人で見に行ったレース、全部雨。
しかも土曜日は全部晴れで、選手が困るパターンでした(笑)

いやあ、今年は嫁連れて行ったから降らないと思ったんだけどな。
by KEO (2007-10-04 23:52) 

雨の中、カメラを構えながらパドック上から観戦しておりました。
生で観戦する迫力はものすごいですね。
スタートの時のノイズは鳥肌が立ちます。
最高な瞬間ですね!
by (2007-10-05 12:58) 

柊なお

 KEOさ~ん♪
 レス遅いですみませんッ(汗)
 んまー、全部雨ですかッ!? そんなワタクシも、もてぎ後の筑波サーキットで雨でしたわあ…。ワタクシが帰るころ、止んで。ああ、ワタクシったら、パワーダウン中なのかしら、と。
 元気アリアリだと、わりと晴れるのですよー。“晴れ女子”を名乗るほどではないかもですけど、あんまり降られないかなあ。でも、最近はダメダメ~状態の外出は、どんより天気が多いような……ううむ。

 来年は、パワー満タンでッ!! 今度こそ勝ァつッ(気合)

 みっくん~♪
 雨の中、おつかれさまでございました。
 金、土の灼熱もキツかったけど、雨はもっとヤだよねえ…(ふー)
 来年は、何とか雨降りにならないよう、気合入れて臨みますわッ

 スタートの轟音を、全身に浴びたいから毎年行くようなものだなー。
 まあ、もちろん。ヴァレと同じ空の下にいたい、っていうのもあるんだけど(照)
by 柊なお (2007-10-08 00:14) 

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