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スペイン対ウクライナ [FOOTBALL]

 この結末を誰が予想しえただろう。ビッグタイトルの初戦を勝てないことで知られるスペインが、ウクライナ相手に大勝。美しいサッカーを見せつけた。

 赤いユニフォームが、元気いっぱいにピッチを駆け回る。ヨーロッパのチームの中でも、平均年齢は屈指の若さだろう。地区予選時からもメンバーを若返らせ、経験値という面では後れを取るも、いろいろなできごとに対しての順応性(というより受け入れ度、かな)や勢いは誰にも負けることはない、と思わせた。
 オランダのマルコ就任後の若返り、国内リーグ組召集は、今すぐの楽しみよりもこれから先の期待感を高めたけれど、スペインのそれはオランダを上回る。

 フェルナンド・トーレスは、美しいサッカー選手だ。ここ数年、彼の行く先はスペイン国内だけでなく欧州全土の注目の的だ。苦い若さを見せることもあるけれど、それを一瞬で忘れさせるプレイを彼は見せてくれる。同世代のポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウドは、プレミア:マンチェスター・ユナイテッドに移籍したこともあり、知名度・注目度を上げたが、個人的にはフェルナンド・トーレスの方が美しいと感じるし、魅力的に思う。とても好きな選手だ。
 まさか4点も入るとは、の気持ちだが、後半の3点目がPKだったこともあり、どうせなら流れの中でのゴールを見せてほしいと思っていた。ウクライナは一人足りない状態で、疲れもピークに達していた時間帯だ。プジョルに抜かれ、一瞬で詰められた。そのプジョルが落としたボールに、寸分の違いもなく足を合わせ、振り抜いた彼のシュートの美しさは、あまりにも短い時間とはいえ、鳥肌を立てるのに十分だった。最高だった。これだ!と、思わず画面の前で立ち上がってしまうほどだ。

 お気に入りの選手が、たまらないプレイを見せてくれると、本当に最高の幸せを感じる。これがあるからサッカーをやめられない。




 アンドリィ・シェフチェンコは、2004年度の欧州最優秀選手“バロンドール”に選ばれた。ACミランのFWとして必要不可欠の選手。ウクライナの英雄だ。けれど、その母国ウクライナは、ヨーロッパで苦戦を強いられる。ビッグイヤーも手中に収めた彼の、今回が初めてワールドC出場になる。『夢のようだ』と語る彼の怪我の回復は完全なものではなく、初戦の出場を危ぶまれていた。だが“母国の夢”のためにスペイン戦のピッチに姿を現した。
 何度も何度もスペインの最終ラインから前へと飛び出した。そのたびにオフサイドフラッグが無情に上げられた。振り向いて、肩をすくめる。しかたないなと、ためいきを落とす。それでも彼はボールが出るたびに走り出した。

 決定的なチャンスは、ほんの少ししかなかった。後半、やっとフラッグに止められることなくアンドリィがゴールに向かって走り続けた。けれど、ゴールは決まらなかった。決まったとしても、もう到底追いつくことはできなかったろう。けれど、彼がフリーでボールを受けることができれば、確実にゴールの可能性が跳ね上がる、という感覚はウクライナだけではなく、スペインにも、テレビで観ている私にも同じく持ち合わせたものだった。

 リーガ・エスパニョーラでは、点を取れないDFは評価されない。ピッチの上に立つ以上、得点できない選手は必要とされないのだ。それはチームではなく、スタンドが求めているものだ。同じことがスペイン代表にも言える。ゴールに対する嗅覚が鋭くなければやっていけない。
 勢いディフェンスは、美しいオフェンスに比べて手薄になりがちだ。この試合でも慌てる場面が何度かあった。バタバタと忙しく自陣で動き回る赤いユニフォームは、観ている私に余裕があったこともあるが、かわいく思えるほどだった。相変わらずだなァ、と少し可笑しく思いながらも、アンドリィの突破だけは絶対に気をつけよう、とオフサイドラインのチェックだけはしっかりやっていたことを知っているから、安心して観ていられた。ここまで観た中で最高のゲームだった。



 途中出場となったラウル。2年前の欧州選手権でのスペインは、彼のためのチームだった。怪我のために長期の戦線離脱を余儀なくされたが、スターティングメンバーからは外れたものの、初戦に間に合ったことはスペインにとって大きなプラスだ。得点こそならなかったが、随所に光るプレイを見せ、“スペインで最も愛されているアスリート”だった彼の真髄を見る思いがした。やはりすばらしかった。
 ラウルを尊敬する若い選手が、彼に触発され、そして若い選手たちの伸びざかりの力にラウルが引っ張られて上昇気流が生まれていく。ディフェンスに課題はあれど、美しいサッカーを見せてくれるのなら。今大会のスペインは相当面白いと思う。最高に期待したい。


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なべ

実はスペインとウクライナだとウクライナが1-0で勝つかと思ってました。
スペインがワールドカップであんなに調子が良いのは珍しいかも・・・。

特に最後の得点はビューティフルゴールでした。
プジョルのパスカットからアシストもプジョル。流石です。
by なべ (2006-06-17 21:56) 

お気に入りのレジェスすら出番がないのが今のスペイン。
古い名前に頼ることなくサッカーが出来るのが今のスペイン。
今年のスペイン、かなりいいとこまでいくんじゃないの!?
by (2006-06-19 01:14) 

柊なお

 スペイン、すばらしかったですね!!
 グループは、メンバーに恵まれたな、という気持ちはあったのですが、さすがにあそこまで美しいとね。4点目が私にとってすべてでした。ウクライナは1人少なくて、しんどいとはいっても。フェルナンド・トーレスが流れの中で決めた、という現実は大きいです。チームの勢いにもなるし。嬉しかったですね~。

 放蕩息子さん、こんばんは~★
 “手のかかる、やんちゃな坊や”は、いつもドキドキハラハラさせてくれます。ホントに手がかかる。爆発的な強さを見せたかと思うと、コロッと負けたりする。困ったなァ、と思いながら、かわいさは変わらない。
 今大会のスペインには驚かされましたが、やっぱり、と思うところも残っていて、見守るのに嬉しいことが多いです♪ 期待してます!!
by 柊なお (2006-06-19 02:37) 

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