SSブログ

アルゼンチン対セルビア・モンテネグロ [FOOTBALL]

 初戦の対コートジヴォワールを観て感じたアルゼンチンの強さは、本物だったと改めて実感させられるゲームだった。

 まさかこれほどまでにゴールシーンを見せてもらえるとは、の思いだ。堅守を誇ったセルビア・モンテネグロがこうまでされてしまうなんて、さすがに思いもつかなかった。ディフェンスを崩していく流れが見事だ。スピードが抜けて速い、というわけではない。その逆にゆったりした流れを感じさせる。ひと言で言うならば美しいのだ。ボールをつないでいくやりとり。選手たちの動きが、自然にスペースを作り出していく。
 気がついたときにはペナルティエリア内にいる。その一瞬後にはゴールネットが揺れている。セルビア・モンテネグロにとって、ほとんど何もできないまま先制ゴールを許した格好だろう。自分たちも悪くはないのだ。しかし、なぜかキックオフから6分という短い時間に、相手にゴールを決められてしまった。このショックは大きい。

 17分にアルゼンチンは怪我による選手交代を余儀なくされる。ルイス・ゴンザレスに代わってカンビアッソが入った。いい流れを引き寄せたいと思っている中での予想外の交代に、少しイヤな空気を感じるも、そのカンビアッソがすべてを吹き払う31分の追加点を決める。
 地区予選では流れの中での失点を1点足りとも許さなかったセルビア・モンテネグロ。彼らの誇る強固な砦は、南米の雄アルゼンチンの前にもろくも崩れ去った。すでにどうしていいか、わからなくなっていたのではないだろうか。フリーにできない選手につけば、後ろから上がってくる選手がスペースに入り込んでいる。本当に“気がついたときには”、ペナルティエリアでボールを持たれてしまっているのだ。振り返ったときには遅く、ゴールネットが揺れている。


 前半終了間際の41分、決定的な1点を奪われる。後半の45分が丸ごと残されているとしても、セルビア・モンテネグロのワールドCは、このとき終わってしまったと言っていいだろう。気持ちと体がバラバラになってしまった。後半、ケズマンのタックルは危険な行為と見なされレッドカード。1人少なくなったセルビア・モンテネグロに対し、アルゼンチンはさらなるゴールを積み重ねた。

 6点を取ったアルゼンチン。もともとオフェンスには定評のあるチームだ。抜けた存在の点取り屋も数多く輩出している。優勝するためには強いストライカーが必要だ。点を取らなければ勝ち上がれない。ディフェンスに自信を持っていたセルビア・モンテネグロだが、オフェンスはかなり厳しい状況だった。初戦のオランダ戦。やはり攻撃重視のサッカーをテーマとするオランダに苦戦を強いたが、ロッベンのゴール1本に泣かされた。1点を取れば勝利、取られれば負けるのだ。
 ディフェンスが弱ければ勝てない可能性は高くなるが、得点できなければ勝つ可能性はカケラも存在しない。ブラジルが強いのは、取られた得点よりも彼らが得たゴールの方が多いからだ。

 今大会のアルゼンチンの強さは、得点能力であるオフェンスのすばらしさはもちろんだが、失点しないディフェンスへの意識の高さも忘れてはならない。とにかく現在のアルゼンチンは、ピッチの上で選手全員が本当に冷静だ。落ち着いて状況を確認し、対処する。意識が高く、集中しているため、対応するスピードが速いのだ。攻守の切り替えが瞬時になされる。
 流れが相手に行くな、と感じると全員がディフェンスモードに入る。余計な動きはしない。ピッチ上に守備態勢が敷かれ、空気が行き渡ることによって、彼ら自身に安心感が出るのだろう。慌てることが本当に少ない。

 この意識の高さ、客観的にピッチを見ることのできる冷静さ、はオフェンスにも十分に生かされている。
 ピッチ上にいる選手と、テレビ画面の前で見る私とでは、観ているゲームは同じでも、視界に見えているものは全く違う。フリーの選手がサイドを上がっている。手を上げて呼ぶ。真ん中でボールを持つ選手は前と逆サイドに視線を振る。フリーの選手に気づかない。ディフェンダーに近づかれ、ドリブルを続ける。もしくは目に入った選手の方にボールを出す。しかし、通らない。私は画面の前で思う。『逆サイ、空いてたじゃないかよ』と。

 そこに出してほしい、というピンポイントにアルゼンチンはボールを出していく。そして流れるように、そこからまたプレイを繋いでいくのだ。美しさはここから生まれる。スピードはさほど必要としない。メリハリのある動きができているから、大らかでゆったりしているように見えて、実際は速いのだろう。なめらかにボールが動いていくのがわかって、観ている方はただただウットリするだけだ。
 メッシの登場で、スタンドが沸いたが、彼の動きはまるで猟犬の仔犬だ。小さいけれど、ピッチのどこにいてもわかる。速い、というよりすばしこい、と言った方がしっくりくる、まだまだ幼い彼だけれど、“どこにいてもわかる”というのは、本当にマラドーナを彷彿とさせる。彼もオーラが違っていた。どこにいてもすぐに目を惹きつけられた。



 個々の能力は世界でトップレベルだ。その彼らがリケルメを中心として、しっかりとまとまっている。相当強い。最終戦を待たずして決勝トーナメント進出を決めた。その最終戦は、同じく進出を決めたオランダが相手だ。“死のグループ”と呼ばれた組の、最高の見せ場になる。
 私はオランダを愛しているけれど、わりと冷静にわかっていると思う。今のオランダには荷が重い。勝てると簡単には言えない。勝ちたいと願っているけれど、難しいと心底思う。どうしたら勝てるか―。

 今、すぐに答えを見つけることができない。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:スポーツ

nice! 1

コメント 2

なべ

アルゼンチン派のなべです(笑)。
オランダとの対決はどちらも決勝トーナメントへは駒を進めている状況なんで、選手構成も楽しみですね。
グループ1位を取りにいくか・・・それとも決勝トーナメントに向けて選手を温存するか・・・。
どちらにしても面白いゲームが見れそうで楽しみです。
個人的にはアイマールとサビオラのコンビが見たい!
by なべ (2006-06-21 00:25) 

柊なお

 なべさん、こんばんは♪
 本当に、今からめちゃくちゃ楽しみです!!
 メンバーは、オランダは変えてこない気が…。というか変えられないような。
 アイマール、観たいですね~ッ
 アルゼンチンはメッシ、スタメン起用かな、って。リケルメはどうするんだろ??
 どちらにしても心の底から楽しみです★
by 柊なお (2006-06-21 00:50) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。