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オーストラリア対日本 [FOOTBALL]

 『日本人だから、“がんばれニッポン”』というのは全くない。ワールドベースボールクラシックでは、日本代表に世界一になってほしかった。それはもう心の底から。ずっと応援していたし、なれる力があると思っていた。強い気持ちで臨んでくれれば、と、目指す気持ちで負けてほしくない、と思っていた。
 好きな、とても大事に思う選手たちがいたからだ。彼らのプレイを観ていて、いつも嬉しくなっていた。だから、勝ってほしかったし十分やれると思っていた。

 今でこそ、こんなのだけれど、日本代表を応援に国立競技場の一番いい席についたこともある。まだサッカーを、ほんのさわりしか知らなかった。日本には好きな選手がいた。プレイスタイルがどうの、とか難しい理由はなく、ただひたすらミーハーな気持ちで彼を素敵だ~、と思っていただけだった。
 だけど、その時に観たゲームは、サッカーの楽しさを伝えてくれた。私がしっかりサッカーを好きになっていく土台になっていることを思えば、とてもとても大きな、意味のある試合だったと思う。行ってよかった。

 アヤックスを知って、オランダを知った。彼らといっしょにいろいろなゲームを観て、たくさんの選手を知るようになった。そこからはもうスピードが落ちることはない。めくるめくフットボール・ワールドにひたすら取り込まれていくだけだった。楽しかった。最高に幸せだし、もっとそばにいたいと思う。



 過度な期待は全くなかった。全敗もあるだろうな、と厳しいグループに入った、と思っていた。日本よりオランダの方が気になっていた。アルゼンチンに勝てるか、セルビア・モンテネグロにはどうか。コートジヴォワールはどんなチームなのか―。

 短期決戦のビッグタイトル。初戦は緊張するものだ。勝てば乗れるし、負けてもそこで終わってしまうわけではない。どちらにしても“次がある”と思えるところは、肩の力を多少は抜けるだろう。だが、『勝ちたい!』という気持ちが最も強く出る試合でもある。それはもう両者ともだ。
 様子を見ている場合じゃない。キックオフから猛ラッシュだ。緊張がほぐれてきた中盤から、というチームもあるだろうが、そのときにはもう遅いかもしれない。先手先手が必勝モードなのだ。先制ゴールは最高の条件だろう。だから、この試合の序盤は、とても楽しいものだった。オーストラリアは魅力的なサッカーを見せてくれていた。それを日本はよく捕らえていた。形にしていたのはオーストラリアでも、最後の一線を越えさせなかった。

 中村俊輔の蹴り上げたボールは、ふわりとペナルティエリアに影を落とした。その下に争うようにして3人。その誰にも触れることなく、ボールは吸い込まれるようにゴールへと転がり、ネットを揺らした。あっけないほどに、先制点が日本に入った。キーパーチャージではないのか、というヒディンク監督のアピールも虚しく、主審は日本の得点をコールした。
 本当に、一瞬のできごとだった。あれ?と思う間に、ボールはゴールへと入った。得点が決まるような空気を、私は全く感じていなかった。ここまでよく頑張って守っていたからね、というご褒美なのか? いや、それならそれでまた違う感触を得ていただろう。自分の感覚がすべての了解ではもちろんない。けれど、疑問は残った。―これでいいわけないだろう。



 後半。高原、柳沢の名前を聞かなくなる。交代したのか、と思うほど、彼らの名前が呼ばれることはなくなった。カメラが追うのも中村俊輔、ヒデぐらいだ。オーストラリアが攻め込めば、中澤、宮本の名も呼ばれていたが、川口に勝てるものはない。
 オーストラリアは、相変わらず形を作りながらも決められずにいた。ゴールに嫌われているわけではないのだが、川口が頑張っていた。普通なら、『オーストラリア、厳しくなったな』と思うところだ。けれど、そう思い切れない。予想以上にオーストラリアが速いことに驚き、そして魅力を感じていたからかもしれない。もっと面白いゲームを、と願っていたのかもしれない。

 84分、同点ゴールが決まる。あれほどまでに好セーヴを見せてきた川口が痛恨の飛び出し。ゴール前の混戦、番人のいなくなった場所へボールが押し込まれた。



 ためいきがあちこちから聞こえてきそうな状況の中で、私は『これで面白くなったなァ』と思っていた。残り時間は少なく、けれど短い時間だからこそ、思い切ってラッシュをかけられる、とも思ったからだ。後半に入ってからの日本の動きは小さくなって、つまらないものになっていた。前半、オーストラリアに強く攻め込まれていたのを、かわすようなふにゃり、とした手ごたえのゴールで先制してしまい、“先に得点した”これ以上ない強いアドバンテージを自信とすることができなかったのだろう。うかつに前に出れば、逆にやられてしまうのではないか、というような不安を拭い切れずに、後半は足が止まり出したこともあり、攻められるまま守勢に回ってしまった感じだった。
 先手先手を打つことで、私はこの試合を勝つことは可能だったと思う。それは予想・展望のページに書いた通りだ。ヒディンク監督は強気一辺倒だったが、日本にだって勝つチャンスは山ほどあったと思うし、実際あの時間までは勝っていたのだ。

 先手を打つ。
 采配についてだけではない。一戦一戦の大きさがシーズン中のゲームとは全く違う。決勝トーナメントでは負ければ終わりだし、グループリーグだとて3試合しかない中で勝ち点を取るためにはムダにできるゲームはない。いかにして勝つか、ゴールを先に決めるか、得点を守ることができるか。ひとつでも相手より先に、考え、動く必要がある。
 フレッシュな戦力を先んじて投入し、彼らの活躍が逆転に直結したオーストラリア。鮮やかだった。追われるようにしか動けなかった日本は、勝っているのに常に受け身を取らされ続けた。ほとんどその影すら見ることのなかったFW2人。引っ張りすぎたのは明らか。ロスタイムしか残されていないような状況で出される大黒。彼にそこから何ができただろう。ピッチに足を一歩でも踏み入れた瞬間からトップスピードに乗せなくてはならない、というのは要求として理解できないことはないが、実行するのは不可能に近い。この試合のように、FW2人が完全に消されていた場面なら、早めの交代で状況を打破するきっかけをつかむべきだった。









 けれど。
 同点にされた状況で。残された時間を見て。
 私は、逆転されるとは予想しなかった。先に書いたように、攻めに転じて受け身から脱出できると思ったからもあるが、何となく負ける感じは薄かった。まさか3ゴール、立て続けに決められようとは本気で思っていなかった。さすがにガッカリした。

 『ドローでも勝ち点1が入ると思ってしまったんじゃないかな』
 テレビの中で誰かが言った。
 “引き分けでもいいや”
 強くそう思った選手はいなかったろう。けれど私はドキッとした。私自身はそう思ったからだ。ブラジルが勝つんだろうから、負けなければ大丈夫、と意識は薄くても考えてしまっていた。オーストラリアは決してそうは思っていなかっただろう。絶対に勝つんだ、とそう思ってずっとずっと最初から試合をしてきただろう。オーストラリア国内では、優勝するぞ!というサポーターが大勢いるという。
 気持ちだけでは勝てない。けれど、気持ちで負けていたら勝つことは難しいと思う。誇り高くいるためにも。

 『勝たなければならない』よりも、強く強く『勝ちたい!』という気持ちを―
 そこで負けてほしくない。


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コメント 2

なべ

俺は愛するポルトガルとアルゼンチンが勝てばいいやとか口では言いながらも日本の試合はあんまし冷静に見れません(苦笑)。
まぁ、あの試合は実力差(監督差?)で順当に負けた内容ではありましたね。
ただ、俺はオーストラリアのサッカーは美しくなくてキライです。
あのサッカーには負けてほしくなかったなぁ・・・。
by なべ (2006-06-17 21:52) 

柊なお

 なべさん、こんばんは★
 ポルトガルとアルゼンチン。どちらも決勝トーナメント進出を決めましたね!
 というか、次、当たってしまうかも!?
 ポルトガルは初戦を見て、“ううむ”な感じでした。苦労しそうだな、って。ただデコちゃんが次はいる、というのが明るい展望でしたが、その通りでしたね。メキシコがドローで終わったので、ポルトガルは1位濃厚ですね。アルゼンチンについても堅いと思っています。相当強いです。優勝も完全に視野です。ブラジルにも負けないだろうな、って。
 そうかー。そうするとオランダと当たってしまうかも…<ポルトガル
by 柊なお (2006-06-19 02:29) 

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