motoGP 第6戦イタリー [**Valentino ROSSI]
あまりにもあっさり。彼は最初にチェッカーを受ける。何事もなかったかのように。これまでもずっと、同じように勝ってきたみたいに。
経過を感じさせず、ただ勝利だけを見せてくれる。嬉しそうに笑う。拳を突き上げる。白い煙を大勢のファンの前で噴き上げて、いつもの場所に登る。トロフィーにくちづけて、シャンパンシャワーをみんなに浴びせる。
大きなハートが宙に舞い、彼はにっこり笑って手を振った。
二転三転する天気。さすがのムジェロも今年はヴァレに冷たい顔を見せていた。それでも彼は、そんな冷たいカノジョの機嫌を取らなくてはならない。振られることは許されない。これまでのように自分を、熱い視線で見つめてもらわなくては。
情けないところは見せられない。そっぽを向かれるわけにはいかない。ここを勝てないようならもう―今季は終わり……私自身はそう思っていたし、たぶんヴァレも同じだったろう。
……ヴァレはもっと。強くそう思っていたかもしれない。そして。そう思ったのと同じだけ、絶対に負けるはずがない、と強く強く信じていたと思う。
ムジェロで。負けるはずがない。
去年、暗雲を吹き飛ばしたのもムジェロだった。その後も骨折やリタイヤ、転倒もあったけれど、『イケる』と思ったのはムジェロだった。まだ大丈夫、と思い、ヨシ、ここから!と拳を握り締めたのもムジェロだ。スペシャルなヘルメットを毎年用意するヴァレが、もっとも美しい背中を見せてくれるサーキット―それがムジェロなのだ。
ふなじゅんさんが書かれているけれど。motoGPクラスは、250ccクラスとは全くの逆で、これまで6戦、ポールシッターが勝利したレースはない。
グリッド順はやはり、前なら前のぶん圧倒的に有利だ。そういうふうになっている。けれど、フロントローの3台と2列目の外については、意外と差がないように思う。1番グリッドでスタートが決まれば、ホールショットまで行けると思うけれど、ヘグると、“もっともいい位置に近い”ところにいるのだから、その場所を狙って集まるマシンに包まれてしまう可能性がある。
内に固執せず、一気に前に出ようという策を取りやすい外は包まれる可能性は薄い。自分が外から被せる立場になるからだ。
ヴァレンティーノは。スタートに執着しないタイプだと思う。一気にぶっ飛んで走ることは全くない。レース中のあらゆる瞬間に、レースすべての流れを考えた上で判断をつけて走る。
そんな彼とてスタートの大切さは十分に知っているし、しっかり出られるにこしたことはない。予選で伸びず、後列になった場合は何とか少しでもスタートの混戦で順位を上げようとしている。
これまでドゥカティのスピードに負け続けてきた。どんなにコーナーで追い込んでも、パスしても、ストレートエンドで背中を突きつけられた。何度も何度も。
手首を完全に返しても、マシンパワーの違いをますます実感させられるだけの結果に、ヴァレは何を思っただろう。並ぶことさえ許されない、そんなパワーを横に感じる瞬間―ヴァレは赤いマシンをその目に映しただろうか。
その赤いマシンが、今シーズン初めてのポールポジションを獲得した。最高速サーキット、ムジェロで。赤いマシンの母国であるイタリアで。
意地悪な天候は、予選の最も忙しい時間に雨を降らせたり、太陽を覗かせたりした。クルクルと猫の瞳のように変わる空模様に、さすがのヴァレも舌打ちのひとつぐらいはしたかもしれない。それでも3番グリッドを獲得。フロントローにマシンを並べた。
「ヘグらないで」と祈るように思うスタート直前。思うのは、予感の証明なのかもしれない。たぶんスパッとは出られない、とうっすら思ってしまう。覚悟していたとはいえ、7番手まで下げたときには、さすがに眉が寄る。
それでも少しずつ押し上げていくのだろう、と思っていたら、逆に下がる。見ている私が舌打ちしそうになる。間違いなくタイヤだ。十分に働いていない。
天気は雨にはなりそうになかった。気温も予選より高いようだった。何を選択しているのか、この時点ではわからなかったけれど、ハードじゃないか、とチラリと思う。それならただ、暖まっていないだけ、の可能性が高い。
去年、そして今シーズンの今までで。私の中でミシュランへの信頼感は相当に薄れている。すぐには信用できない。まさかこんな。スタート直後からおかしいことになるタイヤを、さすがに作ったりはしないだろう、と思ってはいても。
そうしている間に、スタートを決めたドゥカティの赤いマシンは、何事もなく先頭を走っていた。
ムジェロでいいところを見せたいのは、ヴァレンティーノだけじゃない。
赤いマシンに乗る、イタリア人ライダー。ロリス・カピロッシだ。
チームメイトであるケイシーを追いかける。5番グリッドから一気に2位まで順位を上げたロリスは、遠慮会釈なくケイシーを抜きにかかった。ベテランの意地、そして母国グランプリの誇り。ヴァレが後ろにいるなら余計に。ここまで順調にポイントを稼ぐチームメイトを、ただ喜んでばかりいたわけじゃない。
ロリスがケイシーに仕掛けたのを見て、ヴァレがひとつ順位を上げたのを見て。
「よし、もう少しそのまま頑張って。バトルになればタイムを稼げる」
1つずつ順位を上げる。何でもないことのように。
リズラブルーをパスし、33番をかわした。彼もまたイタリア人ライダーだ。なんとかついていきたいと思っていただろう。けれど、見せられる背中に何も答えはない。
混戦をすくうように26番がトップに立つ。ヴァレは3番手を走る。すぐ前にいるのは、いつも苦渋を舐めさせられる赤い27番だ。いつものように。振り返ることもなく、ただ前に出た。
ダニーを捕まえるまでに2周を要した。トップに立ってからもストレートで差を詰められるシーンがあった。YAMAHAはHONDAよりもマシンパワーがないらしい。ふう、とひと息つきながら、それでもコーナーの入り口で、ダニーのアタマを抑えるヴァレを、感嘆の思いで見つめた。
そして―ヴァレのすごいのは、まさにここからだった。
近づいても、近づいても。その背中に触れることができない。大きくなった、と思った背中は、またすぐに小さくなってしまう。それを何度か繰り返すうち、背中はだんだんと小さくなっていく。大きくはならない。ただひたすら遠くなっていくだけ。
少し前までは、ストレートエンドでテイルトゥノーズだったのに。何で追いつけないんだ、何で離されていくんだ。条件はむしろ、自分の方に分があったはず。ストレートでは間違いなくレプソルの方が速かったはず。
同じコーナーを、ほとんど同じように走り抜けていく。その中にわずかな違いがある。
ダニーの背中が小さくブレる。ヴァレの背中は動かない。
たぶんその、ほんのわずかな違いなんだろう。
だけどその、ほんのわずかな違いが、数を重ねて大きくなっていく。
たったひとりで走るヴァレ。何もかも、すべてを消して走る。
コンピュータでムジェロを解析したら、ヴァレのルートが映し出されるんだろう……きっと
そんなふうにも思ってしまう。あまりにも完璧なヴァレのムジェロ。
ムジェロは、ヴァレのためにあるんじゃないか、とまで。思いたくもなる。
表彰台の一番上に立ち、シャンパンをふりまく。興奮冷めやらぬファンを眼下に見て、手にしたハートを大きく振り上げた。
「ハートが足りないんだ」と言って、かぶったムジェロのためのヘルメット。集めたハートにお返しをするように、空に向かって放り投げた。
ムジェロでのロッシの勝利で、
ドカが抜け出すかと思った今年のレースも、
まだまだ分からない感じになりましたね。
この調子で茂木までもつれ込んで、
熱いレースが見れたらいいなぁ。
もう2週間ちょっとですよ!
チケット発売まで!
by のらねこ (2007-06-08 02:43)
久々に気持ちいい結果でした~(^^)
茂木のチケット発売もうすぐなんですねぇ。
ドキドキします♪
by ソシガヤンヤン (2007-06-08 09:33)
こんにちは。
確かに、ポールトゥウィンって今年は無いですね。
レース後の各ライダーやチームのコメントを見ると、DUCATIコルセもセッティング(特にタイヤとマシン)が上手く決まってた訳ではないようで...
オープニングで、大きく差が付いたけど、”このままで終わる訳無い”って言う不安(放送冒頭の「気温が上がってきました...」のアナウンサーの言葉に嫌な予感が...)を持って観てました。
数年前みたいに同じ様な展開を見せられるよりは、バロスの表彰台とか色々変化があって目が離せないですね。
コース上でファンにシールド取られかけてましたが(笑)、あのヘルメット何処行ったんでしょうね?
by HIRO (2007-06-08 10:01)
人生で初めてモトGPを見ました。
初めて見たレースで、ロッシの圧巻の走りを見て大興奮でした。
コーナーでのライン取りが、他のライダーと違ってものすごいキレイだったのが印象に残ってます。
劣勢でも優位に立つ・・・悪いながらも要所を抑える野球のエースピッチャーを思い出します。
次戦も楽しみです!
by 里崎 知宏 (2007-06-08 14:44)
のらねこさ~ん、こんにちは♪
ムジェロで勝てなかったら今シーズンは終わりだ、って。すごい思ってました。悲壮感ただよう思い込みなんですけど、でも「絶対ヴァレが勝つ」っても思っていたのです。
ケイシーが4位だったことで、グッと差も縮まりましたよね。カタランでまたいい成績が出れば…。ホントにまだまだわからないなー、って。
ただもてぎは.........。ドゥカティと相性バッチリ、ヴァレは苦手な場所なので。
今から実は。結構ふにゃふにゃしています(ダメダメ)
チケット、楽しみですね~♪
またお会いしましょう!! 今度こそお茶しましょうッ
ソシガヤンヤンさん~、こんにちは♪
本当に久しぶりにヴァレ真骨頂を観られましたね~vv
すばらしかった!!
彼はあっさり、何でもないことみたいに勝つので、拍子抜けします。ギリギリ気合入れて観てるだけに(照)
次戦カタランでは、地元ダニーの走りに注目しています★
彼の走りも素敵なので、いつも目が離せませんわッ
もてぎ
ガッツリお会いしたいですわあああああ。今年は楽しみ多いなーvv
HIROさ~ん、こんにちは♪
バロス!! 今シーズン、いいですよねえ。ドゥカティはサテライトも良くて、ホントに充実してるなあ、って。バロスが結果を出して、またさらに良くなりそうですよね。スタッフがすごい嬉しそうにしてるのを見ると、なんかグッときます。
そしてそろそろレプソル全開! 期待してます♪
ヘルメット
HIROさん、見てますねえ~。そうなんですよッ ビックリしちゃいました。ひーッ、首がもげちゃうじゃないのよッ、って。
どこいったんでしょうねえ。記事ネタになりそうな気もするけど…。わりとあっさり、誰も何も言わないっていう(笑)
モモレンジャーでも………ああ、欲しいかもおおおおッ
虎ノ門の里崎さん、こんにちは~♪
まああッ!! 初めてご覧になったレースが、ヴァレンチーノの完勝だったなんてッ
ワタクシ、2005年の2戦目かなあ…ヴァレ負けてましたわ(笑)
う……そうするとワタクシ、ゲンが良くないかも!? もてぎもダメだしー(はうー)
ヴァレンチーノの背中を愛しているのです~。
去年、あんまり調子が良くなくて(マシンが)、転倒も多かったし。そういう時のヴァレの背中って、ものすごいんです。
雑誌の笑顔にひと目惚れだったのですが…。背中でまたググググッと惚れましたvv
G+で見られたのかしらん?
motoGPクラスはもちろん、250が面白いですよん。ワタクシ超お気に入りのアンドレア・ドヴィツィオーゾをぜひぜひッ 見てください~♪
めっちゃキューティ・ハニーvv 腕の立つ、いいライダーです!!
by 柊なお (2007-06-08 19:18)
柊なお さん こんにちは
今回は勝ち目が少ないレースだったのに、意地とも言える展開で勝ちをもぎ取りましたね。
本当に、本当にライダー(V.ロッシ)の能力(ちから)で勝ち獲った勝利です。
本気で勝てる要素が一切無いレースだったんだけど・・・・・・。
by ふなじゅん (2007-06-08 22:50)
ふなじゅんさ~ん、こんばんは♪
バロスと最高速が10キロ違ってたりして。レース後に知って驚きましたわ。確かにバロスの追い上げは素晴らしかったけれど、ダニーを捕まえることもできなかったし。そのダニーは徐々に離されてしまったし。
スタート以外は、全く心配なかったですね。まあ、そのスタートがかなり厳しい状況を作った気もしつつ。レースが終われば、あれもまたヴァレの想定内だったのかなあ、なんても。
とにかく彼自身は、全く慌てず騒がずで落ち着いていて。
それが伝わるから、観ている方もその空気にのまれちゃって。あんまりにも滑らかに走っているヴァレに気持ち良くなりましたわあ(ウトウトしかけた、とも言う)
そんなヴァレンチーノを追うダニー。地元バルセロナで、どんなレースを見せてくれるのか楽しみ!!
今月は週末が待ち遠しいですね~ッ
by 柊なお (2007-06-09 00:32)
負けてばっかり・・・(涙)
いいな~ヤマハは・・・
ロッシで勝てるから(^-^)
by かみさま (2007-06-10 20:50)
かみさまさ~ん、こんばんは♪
ケイシーとドゥカティは相性バツグンで、本当に今シーズンすごく速いし、強いけれど、でもダニーだって絶対に負けていないです。マシンの具合がもう少しだけ良くなれば……ダニーの巻き返しはこの先必ずありますよ!!
ダニーは見てて美しいですもん。あの子とヴァレの走りは嬉しくなるものですわあvv
個人的にはマルコメを応援してるんですが…。ブリヂストンとの相性がイマイチなのかも!? ちょっと伸び悩みですよねえ(ううむ)
そして!! アプリリア旋風吹き荒れる250クラス。アンドレアが頑張りますわッ(ガッツ)
by 柊なお (2007-06-10 21:27)