久しぶりに高速を走ってみる [VARIOUS DAYS]
いろいろ…これでいて結構、心配ごととかあったりして。
グルグルしだすと、凹んでみたり。余裕がないと、真冬の真っ黒な海みたいに、冷たく沈んでみたりする。
“○○だったらイヤだな”という予測を、これ以上ないぐらい、ひどい方向へ引っ張り続ける。アタマの片隅で、『さすがにそれはないだろう』と、こっそりひっそり思いながら。
一本。
予防線、とやらを張っているのかもね。
「情けねェなあ」
声に出して、つぶやいてみたら、少しは気合も入るって?
―全然
夕方、会社に迎えに行って。ライディングシューズが欲しい、って言うから用品店へ。
ブーツ以外にもジャケットやグローヴ、ツールやパーツも見て回る。最初は楽しくて、いろいろ手に取ったり、試着したり。
ウロウロウロ、するうちに、何となくぼんやりしてくるアタマ。疲れてきたのかなぁ。
だんだん、じっと立っているのがしんどくなってくる。ちょっと座りたいよ、と思う。年だなぁ、と寒々しく思ったりもする。
今夜こそ“蛍の光”は聞かずに退散、と思っていたのに。
見送られる“蛍の光”。背中越し。
『どこか近くの駅で降ろしてくれれば』
そういうこと言いやがるヤツは、無言で送っていってやる(←イヤがらせ)
ステアリングを握りながら、言葉少なに走らせるクルマ。
ぼんやり感は眠気なのか?
意識の半分は、何かを考え続けている。言葉が流れ続けている。
『どうしたの? ボーッとして』
―確かに。ボーッとしてたよ。何も考えてなかったみたいだよ。
振り返る直前の意識の中は、真っ白だったよ。
『どうもしないよ』
わかった。お腹が空いてるんだ!
9時半を回った。朝昼兼用のトースト2枚とサラダ、紅茶を飲んだだけだ。おやつも夕食も食べてない。空腹で目が回りかけてるんだ。何か食べないと―。
そこまでなるまで、お腹が空いてることに気がつかないわけないんだけど。
このワタクシが。
何かを食べなくちゃ、とは思ったけど。
何かを食べたい、とは思っていない。
心配ごとが、グルグルになって、眩暈を起こさせる。
アタマに気が上って、頭痛が起こる。
頭痛モチは、グローヴボックスに“眠たくならない”薬を常備。
コンビニエンスストアに寄って、サンドイッチとおにぎりで、ひと悩み。
どっちでもいーんだけど…。朝、トーストだし、ご飯にしとくか。
片側一車線。昔からある道路。古い町並み。歩道ナシ。
まっすぐに伸びていかない道。カーヴが多くて、信号は少ない。
駅から離れてる。バス通り。もう終わってる時間。日曜日の夜。
『条件ピッタリ』―待ってました!!
インプレッサのステアリングを握るのは、本当に楽しい。
右側に淡くライトアップされた橋が見えるまで。気持ち良くエンジンを回す。
『楽しかったァ』
駅のロータリーで。
“早く帰っちゃいなさい”
思っているのに、口にもしているのに、なかなかドアは開かない。
心配ごとは、口にしたくない。
心配させたくない、のもあるけど、それが本当になるのがイヤだから。
―言わないことで、心配させてるんだよな。
カケラも見せないようにしないといけないんだ、本当なら。
どっかで気づいてほしい、と思ってるんだ。
何も言わなくても、何かしてほしい、と思ってるんだ、本当は。
『カッコ悪いッスねぇ』
声には出さない。心の中で、小さく思う。
楽しいワインディングロード(え?)を、帰りは一人で走る。
お気に入りのJ-WAVEは、ジャズを流してる。右から左へ流れていく音が気持ちいい。
セルフのスタンドに寄る。少しだけ回復するFUELメーター。
信号の先は、首都高の入り口。さあ、今夜は久しぶりに走って帰ろう。
オレンジ色の灯りに迎えられる。本線へ合流。前方にトレーラー。右に開いて、加速する。
すぐ料金所だ。キックダウンするほどは踏まない。薄く、ゆっくり。タコメーターの針が徐々に上がる。―重い。
チェッ。やっぱりさっき、楽しかったよな。1メモリ切ると軽いからなー。半分入ると重いぞ、ハニー。
ETCレーンを通過。合流するその先。左からは誰もこない。後ろを突いてくるヘッドライトもない。
“まぁ、ゆっくりめにね”
深呼吸して、ステアリングを握り直す。アクセルをゆっくりと踏み込んでいく。むやみに回したりしない。
両側を高いフェンスに囲まれている。見えるのはオレンジ色だけ。ポツンポツンと点在する左車線の車を置き去りにしていく。近づいてくるテイルランプを、今日は追わずに左へ逃げる。前にトレーラーの大きな背中。右を走るトラックとの距離を測る。シフトダウンして、一気に加速すれば、余裕で通過の間柄。
シフトダウンする気ナシ。ゆっくり流しながら、距離を見続ける。“行けないかもしれないなー”と、ちょっと悔しい気もしながら、それでも左を走ることをやめない。チラリチラリと覗くサイドミラーとバックミラー。
『行けんじゃん?』
グッと踏むアクセル。前に出るハニー。余裕持たせで右ウインカー。
右へ分岐、坂を上がって、また右へ分岐&合流。
上り坂、てっぺんで合流してくる。出入りがあるから、左車線をおとなしく。2車線に戻る。右へ戻ろうかと思うバックミラーにライト。微妙な距離とスピード。一気に開いて、行けないこともないか。いや、ちょっと厳しい。たぶんブレーキを踏ませる。じゃあ、ダメだ。
我慢して待つ。やっと横を走り去る。チラ、と見る車…“な~んだ”。少し行かせてから移動。追わずに適度な距離を保つ。まあまあ頑張ってるなぁ。―でも敵じゃない。
大好きな橋のたもとを抜けていく。左右に振られる空を飛ぶ道路。フェンスは取り払われ、視界が広がる。左にハンドルを切って、コンクリートの壁を突き破ればまっさかさまだ。何かあったら逃げ場はない。いつも思う。遠くの光を眺めながら、必ずその前にコンクリートを見て思う。
ピリッとする痛みが走る(気がする)。そうなるわけにはいかない。張り巡らされるバリア。さらに強化。
ここからはノンストップ。落ちることのないスピード。上りながらカーヴしていく。その先に分岐。今度は左だ。右車線を一気に走って、全部パスして左に滑り込む。
ほぼ90度左に折れていくジェットコースターのような下り坂。見下ろす先の3車線。加速して、時々はそのままの勢いで大外へ。
先は短い。左に出口。追われる可能性もないことはない。さすがにこの時間に突かれたくないなー。バックミラーを絶えず気にして、トラックの間を縫って左。
余裕残しの時は、下り坂の合流から、のんびり流して出口まで、ということもある。
下界に下りて、窓を開ける。夜風を受けながら、ふううううと息をひとつ。
駐車場にしっかり入れて、メガネを掛け直す。ライトのスイッチを全部切る。窓を閉める。荷物をまとめて、降りる準備完了。エンジンはまだ切らない。
『帰りました』
取り出す携帯電話。届いているメールに返事。
『楓の散歩に行ってきます』
キーを回して、ロックを解く。
ドアを開いて、外に出る。
………アタマ痛いの、忘れてたよ
っていうか、心配ごとって一体!?
いや、心配ごとはね、なくなったわけじゃないんだけどね
でも余計なことまでね、考えなくていいってことでね
ハニーがいて、幸せだよ
こんにちは。
柊なおさんの文章は、ちょっとした小説のように心情描写とか相変わらず良い感じです。
自分的には、心配事を抱えて走ると集中力が落ちるので、(その時だけは)忘れるようにしてますが、好きな車で気持ち良く走る事で気分が紛れる事もありますから、一概には言えません...
心配事が良い方向に向かうと良いですね。
by HIRO (2006-04-20 02:44)
今回の柊さん小説家か詩人みたいですねぇ~私も気持ちを切り替えるのに夜にバイク乗ったり車乗ったりしてましたよー今はそんなの出来ないから模型作るのに集中してやな事忘れてたり・・・気持ちを切り替える方法があるのは大変良い事だと思います。溜めないのがイチバン!!
by (2006-04-20 03:06)
HIROさんやB’SPACEさんと同じ感想です。
数行読んだあとは、小説を読んでいるのと錯覚しました。
描写が細やかですし、盛り上がりもある。
自動車やバイクの小説家も夢ではない!?
by カズ− (2006-04-20 07:01)
第二章?続編?も早く〜♪
by pitts (2006-04-20 09:09)
周囲への気遣いに溢れた文体ですね....♪
だれもが「幸せだよ...」って口に出来れば良いな〜っと
by まえまえ (2006-04-20 20:44)
HIROさん~、こんばんは♪
運転の時の集中力…疲れてきたり、少し眠たくなっていたり、とかの場合は、逆に高速に乗ったりします。アドレナリンが出る気がして。
一般道をゆっくりと、ラジオを聴きながら、SPITZ歌いながら走るのも好きですvv
“好きな車に乗って走る”―すごくすごく嬉しいことですよね!!
インプレッサに出会えて、本当によかったなぁ、って思います。いろいろ考えても、たぶん次もまたインプレッサに乗るんじゃないか、って。次こそきっとセダンです。楽しみだな~(ウットリ)
いつの話ですか!?って感じですけども。その日を夢見て、頑張ります~♪
B’SPACEさん、こんばんは~★
好きなこと、好きなもの、がたくさんあると、気持ちの切り替えもしやすいし、嬉しいことが増えていくし、幸せなことですよね♪
私の場合は、競馬あり、サッカーあり、野球あり。そしてもちろんSPITZありで、なかなか楽しいです。
思いが深いと、ダメなとき凹み方も激しいのですが…(本気で泣きが入ります。気味悪がられるぐらい)。それでも何かが救ってくれたりするので、ああ、やっぱり好きなことがたくさんあってよかったな、って。
ちなみにガンダムを見ると、入りすぎて大変です。半年に1回ですもん。しっかり見たら、ハマっちゃって、ズシ~ン、って。しばらく見なくていいや、って思っちゃいます。そういうことってないですか!?(私だけ?)
カズーさん~、こんばんは♪
ずーっとやっぱり好きなことなのです<文章を書くこと。
やめられないんですよねぇ。インターネットの世界は、私にとってうってつけでした。結構な勢いで書いてきたと思います。でもだからこそ、最初の方で書いたものは、今読むと“うひゃひゃ”な感じで赤面モノですよーう。
いつか物書きになれたらいいなぁ、って。いくつになってもダイジョブなことだから。のんびりまったり、好きなこと書いていきたいと思います♪
pittsさん、こんばんはー★
家、到着しちゃいましたからね。また出かけて行かねばなりませんなー。
この先は完全フィクションで、妄想のみで続けてみますか!?
そうそう、この間、わたくし夢で、あの!!!マイケル・ジョーダンとご一緒してしまいましたわ~★ ウットリでした。内容はスッカリ丸ごと忘れちゃいましたけど(ダメダメ)
のんびりお待ちください。また楽しい話をお聞かせいたしたく~♪
まえまえさん~、こんばんは★
「幸せだよ」って…ね。なかなか言えない。私も口に出しては、ほとんど言ったことがないです。楽しかったり、嬉しかったり、よかったな~、と思うことが、“幸せのカケラ”なんですよね。
つらかったり、悲しかったり、さみしかったり。作用反作用じゃないけど、そういうことがあって、逆の“嬉しい気持ち”とかが大きくなるのだから。いろいろなことを感じることが、“幸せの一歩”なのだろうなー。
なーんて、エラそうに言ってるんですけど…。やー、でもホントに。なかなか。人生は厳しい。心配ごとも少しずつ薄れていきそうになりつつ、消えてはなくならないゾ。
上手に付き合いつつ。いい時間を少しずつ★
by 柊なお (2006-04-21 01:22)