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motoGP 第2戦カタール [**Valentino ROSSI]

Valentino Rossi、今季初優勝~ッ!!!!

 

 予選から、必死だったように思えて。
 ヘレスのときと比べて、ずっとコースにいた。それだけ走れている、ということだし、しっかり時計を出したい、少なくとも2列目までには絶対にいなくてはッ!!!という感じが、彼の背中からした。お尻には“THE DOCTOR”の文字。見たかった言葉。
 去年までは、予選はあくまでも決勝レースのためのもの、だったような気がする。前にも書いたけれど、私が見るようになってから、彼がPPだったことは本当に少ない。

 ヘレスではマシンの調子が上がらず、苦しいまま終わってしまった。結局ギリギリの9番グリッド。せっかくの開幕戦、大好きな場所だったのに、決勝はご存じの通り。
 あんなことになるなんて―誰よりも、彼自身が一番信じられなかったに違いない。

 だから。カタールでは絶対に、内に押し込められてしまわないように。不利を被ることのないように。少しでもいい位置に。少しでも先に、前に、という意識が見えた。
 ウオームアップランから、各マシンが戻ってくる。グリッドについてレッドシグナルを見つめる。
 “今日は大丈夫”―ピットでニコニコ笑いながら、カメラに手を振ったヴァレ。素直にかわいかった。大好きな笑顔だったから。

 

 

 

 『スタートはお願い』

 

 祈るように見つめる。レッドシグナルが消える。

 轟音を上げて、マシンが動き出す。PPからケイシーが1コーナー目指して飛び出していく。後を追うのは4番グリッドからのニッキー。いドゥカティはハナを切れない。
 黄色いマシンは、普段にはない積極さを見せて前へつける。内を突こうとしたマシンに譲らない。外から被せられても一瞬早く抜け出した。『ヴァレ!!!』

 緑色のマシンに、一瞬目を奪われたけれど、今日だけはごめんね(中野くんッ)、と黄色のマシンだけを追う。前は若い子2台だ。正直言って、あのコンビよりは全然いい。


 


 

 

 “競走”というものは、基本なところで絶対的に『前が有利』だと思う。
 競馬もしかり。サイレンススズカが強かったのは、テンのスピードが圧倒的だったからだ。そのまま行ったきりなのだから、強いに決まっている。並びに行こうにもついていけない。ついていけば、つぶされてしまう。

 一瞬の脚に賭ける子は、前半、中盤と脚をためる。逃げ馬のペースに巻き込まれないようにする。自分を信じて、最後の脚を信じて我慢する。勝負どころが来て、満を持してGOサインを出す。弾けるように背中が跳躍する。タービンが回る、というのはこの感じ。

 それでも、届かないかもしれない。
 逃げた子の脚がなくならなければ。前を進んでいるのだから、どこかで瞬間、スピードで完全に上回らなければ、同じ距離を走るだけ追いつかないことになる。
 絶妙のペースで、前を行く子が走っていたとして。最後の直線ゴール前、さらに脚を使われてしまったら。

 

 後ろから行くぶん、差し届かないこともある。

 

 そして、前を行く子の前は開けたグリーンベルトでも、後ろには同じように、さまざまなことを考えて走る子がたくさんいる。最初に少し無理して、最後タレて下がってくる子もいる。コーナーでは、お互いに、いい場所を通ろうとして、内が狭くなったり、外に振られてオーバーランになったりもする。
 抜きたくても抜けない、出たいのに出られない。その間に前を行く子に差を広げられてしまう。『このままじゃ負ける』。くちびるを噛み締めても、小さくなる背中を追いかけられない。

 

 

 

 オートバイも。
 スタートをヘグる。集団の中に入ってしまう。コーナーごとに縦長になっていく。グリッドが良くても、気がつけば10番手、なんてよくある話。2列目からは前にも横にもマシンがいる状態で、モマれたら最後だ。
 走り出して、前に出たいと思う。簡単には抜けない。相手も必死だからだ。1台抜くのに時間がかかれば、その間に前との差は開いてしまう。バトルになれば、そのぶんスピードは落ちてしまう。後ろにいる以上、常に抑えられてしまうのだから。

 

 ヴァレは違う。
 彼の走りを見ていると、抜かして前に出て行くことは全く難しいことではない、と思ってしまう。簡単なことだと思えてしまう。あっという間に1台、2台とパスしていく。彼の前にだけ、まるで追い越し車線があるかのように。違うルートを走っているかのように―。


 でも、本当に。
 ヴァレにしか見えないコースがあるんだ、と思う。ほかのライダーには見えない、細いけれど白く光る道が彼には見えているのだと思う。一瞬しか現れないルートでも、彼はそれを見逃すことはない。
 怖れない、間違えない。その場所にマシンを滑り込ませることを。

 去年のオランダ。PPスタートのヴァレ。トリッキーなコースで有名なアッセン。スタートはうまく出たい―みんな思うこと。
 思いっきり失敗した。PPなのに。“え?”と思う間もなく一瞬にして置かれた。マルコメ、ニッキー、セテ、中野くんに行かれ、あらあらあらの5番手で追随。正直、ほかのライダーだったら、しょっぱなから“あ~あ”で、ため息の嵐。ヴァレにしても、嬉しくはない。全然まったく。

 でも―
 3周目で中野くんをパス、6周目にはニッキーを抜いた。残るはテレフォニカの2台。8周目でセテを捕らえ、半分終わる10周目にはキッチリ先頭に立っていた。
 呆気にとられたのは、最初だけだったな。あんまりにも普通に抜いていくから。落ち着いて、いつでも行きたいときに前に出ればいい、という感覚な気がした。背中が動かない。
 いつだってレース全体を考えて、一瞬一瞬を走るひとだけど、このときその凄さを、まったく凄いと思わずに見ていたように思う。レースが終われば、ヘルメットを取って笑う。綺麗な手を振ってくれる。

 


 

 早め早めに仕掛けていった。逃がそうなんてカケラも思ってないみたいだった。早く早く、と彼の中から、どんどん出てくるエネルギーが言ってるみたいだった。ニッキーをかわして、ケイシーを追う。追いかけてくるのが、あのヴァレンティノ・ロッシだなんて、どんな気持ちがするんだろう―。

 それも長くは味あわせてくれなかった。10周目にはトップに立つ。半分以上を残して、前半少し無理したんじゃないか、と薄く思う。熱い場所のミシュランは、多少不安があるにはある。
 一瞬。追い上げてきたニッキーにトップを奪われた。
 『計算でしょうか?』
 『そうですねぇ…。ロッシのことだから、そうかもしれないですけど。…いやぁ、わからないですねえ』

 

 “計算なわけないだろ”

 

 行かしておいて、最後の最後で抜く―
 そんなカケヒキ、今回はカケラもないよ

 

 譲らない勝利。ヴァレはトップでチェッカーを受けた。

 


 

 ウイニングラン
 コース際に設置されているカメラを見つけて、フェンスにマシンを立てかけた。
 カメラの下に走ってくる。ワタワタと手を振り、ヘルメットの紐に指をかける。

 “早く早く!!!”
 急き立てられる。すぐにでもヘルメットを剥ぎ取りたい。
 グローヴの指が、もどかしく動く。
 そのもどかしさに背筋を何かが走った。

 

 ゾクゾクした。
 めちゃくちゃセクシーだった。
 どうしようおおおッ、とテレビの前で大興奮…(←ヘンタイ) 

 

 

 

 “早く~ッ!!!”
 ヘルメットを脱ぐだけなのに、なんでこんなに.......... 

 

 

 紐を外して、ヘルメットを文字通り、剥ぎ取った。
 満面の笑みにふわふわの髪が踊っていた。
 カメラに思いっきりキスして、ニコニコ笑った。

 

 最高の瞬間
 こんなに嬉しい勝利はなかったな。
 ヴァレの太陽が、強く輝いて。

 次のレースもまた。
 気持ちヨクしてくれるはず。


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のらねこ

ウイニングランの途中でロッシがヘルメット脱いで、
満面の笑みでカメラにキスしたの、
最高でしたね。
今年は新人ライダーの台頭もあって、
面白いレースが多くなりそう。
うちは日テレの深夜でしか見れないから、
また夜更かししないと(笑)。
by のらねこ (2006-04-14 00:22) 

カズ−

バイクレース、競馬と重なっているようですね。
どちらにも愛情が注がれている感じがします。
今日の記事も一瞬競馬中継と勘違い、、そんなわけはありませんが。
by カズ− (2006-04-14 07:09) 

HIRO

こんにちは。
臨場感あふれるレポート流石ですね。

競馬にお強いので?そう言う観点からバイクレースを観るというのも新鮮でした(どうしても、ライダーの技量とかタイヤやマシンの特性とかで見がち...(笑))。

カメラの前のパフォーマンス?は、観客席が極端に少ないから...(その割に、コース脇にロッシファンが何人も居たような)とも思えるけど、昨年終盤から数戦勝てていなかった分の喜びが出ていたような気がします。

990cc最後だし、F1に行くかもしれないという噂もありますから、今年のもてぎは、予選から行くしかないですね>パドックパスやピットウォークも(笑)
by HIRO (2006-04-14 07:53) 

harry

文章が最高に良いですね!惚れ惚れ。うーむ。
朝から鼻血出そうです。。
by harry (2006-04-14 07:57) 

まえまえ

よくもあんな場所にサーキットを....と、関心してるカタールですが
臨場感溢れる記事に、柊なおさんの熱い想いが伝わってきます♪
打倒ロッシ勢力も成長して、今シーズンも楽しみですね
by まえまえ (2006-04-14 08:34) 

ふなじゅん

柊なお さん こんにちは
V.ロッシ、今回はやってくれましたね。
予選から決勝用タイヤでマズマズのタイムを安定して出していたので、絶対に結果を出すと思ってました。

> “計算なわけないだろ”
ラスト4・5周でホームストレートで抜かれたシーンの話ですよね?
いやぁ~、アレは計算だと思いますよ。
N.ヘイデンが抜いたと言うよりは抜かせたって感じでしたし。
その後のパッシングとダッシュは「ロッシ パターン」で圧巻でしたね。

次のトルコも楽しみですね。
by ふなじゅん (2006-04-14 08:51) 

赤いコンビのファンのB’SPACEでございます!MOTO GPを面白くするためにも次回は赤いバイクがもらいます!
柊さんの文章いいなぁ~読んでて面白い・・・
by (2006-04-14 22:23) 

柊なお

 のらねこさん、こんばんは~♪
 腰が抜けちゃいそうでしたよー。本当にテレビの前で大変でした。無理やり抑えつけてないと、何するかわからないぐらい。いや、ホントに。
 思いっきりキスしてくれたのももちろんなのですけど、ヘルメットを脱ごうとして、少しあごを上げて指で紐を解こうとしているところは…(自主規制)
 最高でした。いいレースだったし。しんどかった後で余計に。

 ケイシー、頑張りましたね♪
 ダニーも。二人ともmotoGPクラス2戦目だから、これからどんどんマシンにもレースにも慣れていって、強く速くなっていくのだろうな、って。
 トニも頑張っているし、若くてかわいい子たちが素敵なのは、嬉しいことです~vv
 たまたまG+、2戦続けて生中継でしたけれど、3戦目は深夜です。motoGPクラスだけはそのときに見たいから、私もやっぱり寝不足覚悟ですよーう(半泣)

 カズーさん~、こんばんは★
 競馬もいいですよー。ギャンブルとして見るよりも、やっぱり馬が走るところがすごくいい。タービンが回る瞬間を目の当たりにすると、ゾクッときます。
 それでも差し届かなかったりするんです。高松宮記念、という1200メートルのGIでは、2着に入ったラインクラフトの脚が、ゴール前、際立っていました。絶対的に勝ち馬よりよかったんです。ただ、彼女のタービンが回ったのが遅かった。

 オートバイレースは、だいぶ前に見ていたことがあったんですけど、そのときはライダーの顔を覚えるまでにはいかなくて。
 一昨年の冬、ヴァレの顔を雑誌で見ました。なんてかわいいひとなの!?って。ひと目惚れでした。名前を見ても知らなかったし、ライダーなんだ、ってことだけ知って。
 好きになってよかったな~、って。こんなにも楽しい。好きなひと、好きなこと、好きなものがたくさんあると、嬉しいことがたくさんになりますね♪

 HIROさん、こんばんは~ッ
 競馬と重ねてしまうのは…どうしてなのかなぁ。やっぱり相当数見てるからかな<競馬
 セナやマンセルがいたときのF-1は結構見てました。セナのことがあって、なんだか悲しくなって。日本ではすごく人気あるけど、もう戻りたいと思わなくなってしまった。WRCの方が全然好きです。大好きなマシンが走っているし。
 オートバイレースを見たら、もっと面白かった。おお、これは!?って思ったんです。ヴァレが走っている、というのもあったけれど、スーパーバイクも見たりしますもん。ちなみにハガのノリちゃんが好きです。
 ダブル・トロイが調子良くて、困るなぁ、って。ノリちゃん頑張れ~、って。
 さあ、もてぎ。6月のチケット発売が楽しみでvv
 去年も予選から行って、ヤマハブースでヴァレを見ました♪ トニがかわいかった。中野くんもケイシーも見てウキウキでした。っていうか、あんな大きなイベントで、あれだけ近くにスーパースターが出てくるって、ほかにないですよねッ(ウットリ)
 今年はぜひぜひぜひッ!!! パドックパス、ゲットです★

 harryさん~、こんばんは♪
 ありがとうございますー★
 んもー、本当に。シャツのボタンに手が掛かりそうでした。いや、もう引きちぎり、かも。
 めちゃくちゃセクシーで、あの瞬間、世界中でどれだけの婦女子が…、と思うと.....。罪なオトコです、ヴァレ。
 普段は、さほど感じないのですけど<セクシー
 かわいいかわいい、ってひたすら思って。“ああ、ヴァレのおかんになりたい”とか思うことは多々ありました(←おバカさん)
 フフフ、でもharryさんに鼻血を吹かせそうになるなんて。かなり嬉しいです~♪(←やっぱりヘンタイ)

 まえまえさん、こんばんは~♪
 カタール、すごいですよねぇ。砂しかないですもんね…。
 でもなんかこう、王さまたちの道楽な感じがして、鷹揚な雰囲気とセレブっぽい空気がなんか。ソソるのかな?
 “Stop The Valentino Rossi.をテーマに今季はお送りします”、なので、ケイシーやダニーみたいな新勢力と、赤いドゥカティとホンダの頑張りに期待です!!

 ふなじゅんさん、こんばんは~★
 ふなじゅんさんのおっしゃっていた通りでしたね!! ヴァレは黙ってない、って。しんどいの、続きそうだな、って思っていたので、本当に嬉しいです。よかったーvv

 そうかー。あれは計算だったのか。すんなり抜かれたなぁ、というのはあったし、少し時計を落としていたのは、最後の最後で踏ん張れるように、だろうなとは思っていたのですけど。
 でも、すぐまたトップに立つ、ってわかっていたから、冷静に見ていられました。

 嬉しくてたまらない、っていう走りをしますよね。特に今回は、すごく強く出ていたと思います。笑ってるんじゃないか、って思うぐらい。
 ロナウジーニョも、楽しくてしょうがない、って顔してボールを蹴っています。すごく通じる部分があって、ああ、この二人は別なんだな、って。
 見ていて、嬉しくなるし、楽しくなります。ずっとオートバイに乗っていてほしいな。絶対にF-1マシンより、オートバイの方が楽しいと思う!!

 Stop The Valentino Rossi! トルコ戦、楽しみですねッ

 B’SPACEさん~、こんばんは★
 赤い彗星たちは、ホントに速いですからね~。一番怖いのは眠ってるセテですよー。不発続きなので、余計に怖い。爆発したら誰も追いつけないんじゃ、って。
 ロリスもロリスで百戦錬磨ですもん。行かすとそのまま、になってしまう可能性が大なので、なんとか接戦に持ち込みたいな、って。

 それにしても!! aprilia、すごいですよねッ!!! 125と250では軒並みですよ。持っていかれまくりです。去年、125を席捲したKTMがついていくのに必死ですもの。ミカ、頑張ってます。

 読んでて面白い、と思っていただけるのが、最高に幸せなときです~。本当にとてもとても嬉しい!! ありがとうございますッ
 いっぱい書いてきて、少しずついい感じになってきているなー、って思います。前に書いたもの見ると、すっごい恥ずかしいですもん。うわ~、って。
 でも、それがあったから、今、“面白い”って読んでもらえてるんだ、って。書くことが好きでよかったなー、と(しみじみ)
 B’SPACEさんの文は、どれもこれもみんな気持ちがあったかくなる、幸せな文なのです~。オートバイの話もすごく面白かった! まだ私にオートバイ乗りとしての経験が少ないから、これからどんどん乗って、いろんなことを知ってから、またB’SPACEさんちのオートバイ話を読んで、おおおお、これは~ッ!!!!と思いたいです。
 なので、これからもたくさん、素敵なオートバイ話を聞かせてくださいねッ!! あ、もちろんガンダム話もお願いします!(←食いつき一番ですからねッ)
by 柊なお (2006-04-15 01:31) 

菜々子

すこしだけHな日記を始めたので、見てくださいね(^-^)ノ♪
by 菜々子 (2006-04-15 10:01) 

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