予感 [BASEBALL]
肩の力を抜いて、ふううとひとつ息をつく。目を閉じて、静かに思いを巡らす。
『勝てないかもしれない』
そういう気持ちはしない。勝ってほしい、負けないでほしい。そう願う気持ちはもちろんあるけれど、傾きすぎてはいない。
『絶対勝てる!』
そういう気持ちは、残念ながらしない。世界一が決まる最後の一戦。どちらが勝っても、すばらしいことなのだ。おかしな緊張は、たぶんどちらにもないだろう。強心臓の松坂が先発、2番手に渡辺俊介を起用するという。ピッチャーについては、彼らが彼らのピッチングをして、納得できる仕事ができるのなら、何も心配はいらない。
イチローをはじめとする打撃陣。勢いに乗った彼らが見せた美しい打球は、まだ目に鮮やかだ。忘れてほしくない。そのイメージを。フィールドを駆け抜ける姿を。得点する喜びを。
大味なゲームにはならないだろう。ミスは許されない。
ひとつひとつのプレイを、丁寧にしっかりと行うこと。地に足がついたプレイを。
『悔いのないように』
よく聞かれる言葉だ。それはどのようなことなのだろう?
“負けて悔いなし”―それは本当か?
スポーツ選手である。それもプロフェッショナルの。
勝負に携わる人間だ。“負け”は悔しいに決まっている。そうでなければスポーツ選手にはなれない。ましてやプロになどなれるわけがない。
“勝ちたい”―その思いが、前に進む原動力になるのだから。すべての根源なのだから。
『悔いのないように』戦えるのなら、その後には間違いなく“勝利”が待っている。
世界一へ―
心の底から期待している
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