運命の人 [CLOVER]
『もしもし~♪』
『もしもし。ごめんねぇ、いきなり。…今、大丈夫?』
“一体何時間話せば気が済むのッ”と、ドア向こうから怒鳴られながらも、受話器を離さなかったあのときが、ついこの間のことみたいなのに。あっという間に“電話、1人に1台”時代になってしまった。…そっか、気がつけばもう10年は経ってるんだものね。
キャッチホン(今さら使わない気がする)もなくて、長電話になったら、もう諦めてもらうしかなかったあのときから、話したい相手に直接つながる番号に、自分の電話でかけられるようになった今、相手の状況を問わず、コール音を鳴らせることに、少しのためらいを感じるようになる。“とりあえずはメールで…”、じかに話すことができるのに、逆に電話をかけることが少なくなった。
胸に咲いた黄色い花 [CLOVER]
彼女は感情の起伏が激しい、と思う。すぐ怒るし。僕の言った言葉を、僕の意味するところじゃない受け止め方をして、怒りだす。『そういう意味で言ったんじゃない』って言っても聞かない。挙句の果てに『すぐ意地悪なこと言う』だ。
思ったことを口にしたまでで、別に彼女のことをどうこう言ったつもりはないんだ。でも、なぜかそれが気に入らないみたいで、怒る。ゴネてるようなときもあるけれど、ヘタをするとそのまま運気が下降線のときもあって、そうなると手がつけられない。
本当に機嫌が悪くなると、話をしなくなる。僕の方は、何がいけなかったのか、とか、そういったことを考えだして、やっぱり無口になる。沈黙が二人をますます遠ざけてしまう。そのことには最近気づいた。でも、どうしていいかわからない。