motoGP 第6戦イタリア [**Valentino ROSSI]
不安はなかった。
あの予選の走りを見れば、それは誰の目にも明らかだったろう。
彼はただひたすら、マシンを駆ることを楽しんでいた。そして誰より速かった。
彼のマシンの後を、必死で追うマシンたちがいる。彼のラインを、ムジェロの走り方を盗み取ろうとするかのように。
King of Mugello―その名にふさわしい彼の存在。どんなときでもムジェロで彼が負けることはない。
イタリアという国と日本は、物理的な距離こそ離れてはいるものの、非常に共通点が多い。
半島と島国という違いはあれど、周囲を海に囲まれ、魚介類を多く食べる。タコを食す文化は実は少なく、イタリアと日本はその数少ない文化を持つ国だ。
ローマ皇帝が権勢を振るい、ヨーロッパの広くを治めたこともある。ルネサンス発祥の地は、今も歴史や伝統を感じさせる建造物も多く、名だたる芸術家を輩出した。今ではブーツ型の半島でしかないイタリアだが、ふとした瞬間のちょっとした部分に、その凄みを感じることもある。
そんなイタリア、という国を、私はとても好きだ。
サッカーだけは、オランダを一番に思っているけれど。
Valentino ROSSIは、母国グランプリでは必ずスペシャルなヘルメットを用意する。昨年のヘルメットには大きな赤いハートが描かれていた。
今年の“ムジェロ・スペシャル”は、彼本人の顔がそのまま描かれるという奇抜なデザイン。頭頂部に目を見開いて、口を開けたヴァレの顔…彼曰く「これは最終コーナーでブレーキングするときの僕の顔」だそうだ(そりゃまたすごい)。ヘルメットだけを見ても唖然とするしかないようなデザインなのに、それを被ってマシンを走らせるとなると―。
誰もがポカン、と口を開け、呆然とするしかない光景が現れた。どんな気持ちでそのヘルメットを被り、サーキットを走っているのか。愛しい存在は、ムジェロを埋め尽くす黄色い波と世界中にHappyな光を振りまいた。
「久しぶりすぎて、前にポールポジションを取ったときのことを忘れちゃいそうだよ……1年ぶりだね」
通算50回目のポールポジションを獲得したプレス・カンファレンスで、ヴァレはそうコメントした。彼自身、ポールポジションというものにそれほどのこだわりがあるわけではないだろう。観ている私はいつもそう思っている。プラクティス含め、彼はレースのために走っている。最高のセッティングを見つけるための時間だ。レースが始まるまでのすべては。
美しく走り、それを楽しむ―その結果にタイムがある。贅沢で傲慢な感覚なのかもしれない。けれどヴァレにはたぶんそれだけのことだと思う。
慎重にスタートを切り、いつもと変わらず5、6番手で最初のコーナーを迎える。ポールポジションは1年ぶりでも、ホールショットは観たことがあるのかないのか。
それでも今季は早い周回で先頭に立つ。早く思い通りに走らせてくれ、とばかりに4周目にはトップに立った。
相手は昨年の強敵赤いマシンのケイシーと、今シーズン、ヴァレより先に表彰台の頂上に立ったダニ。特にダニのマシンはミシュランの復活も顕著で速い。表彰台の常連はムジェロを終えた時点で、チャンピオンシップポイント2位につけている。
決して気を抜ける相手じゃない。追われるプレッシャーは、さしものヴァレにもあるだろう。それでも彼の前には誰もいないサーキットだけが横たわる。好きにしていい、と囁いているかのように。
だから彼はただそれだけを楽しむ。相手はもうダニでもケイシーでもなく。
昨年のムジェロで彼は、超然とした走りを見せてくれた。ヴァレにしかできないパフォーマンス。手を伸ばすことすらためらわれる背中。言葉にならない。まとうオーラに誰もが圧倒されたムジェロ。彼のためにしか存在しない、とそれがすべての真実であるように感じた時間。あまりの鋭さに少しの躊躇いと感嘆。目を離せなかった。不安ではなく、あまりのすごさに。
今年もそうなるのだろう、と思っていた。上海、ル・マンと連勝して帰るイタリア。スペシャルなヘルメットを用意して戻るムジェロ。どうしても負けられない決意。絶対に勝ってほしい期待。
ムジェロ・スペシャル―そのとおりの結末。
あのヘルメットで負けるわけにはいかない(笑)
誰より速いヴァレ。
誰よりも楽しんでみせた。
いつでも彼は、レースを心の底から愛している。
その愛が伝わってくる。その愛を返したいと思う。
ただそれだけの愛しさ―
連戦のカタルーニャでは、スペシャル・マシン“アズーリ”が登場する。
土曜日に開幕するユーロ2008。アズーリは“死のグループ”と呼ばれるグループCに入っている。初戦のオランダ戦を前に、ヴァレはアズーリを勝利に導く(らしい)。
ここでだけは―死ぬほどオランダを応援する私だけど……
カタランはスペイン。スペインもユーロ2008に出場している。
熱狂的なサッカーファンの多いスペインで、“アズーリ”の運命やいかに!?
チームメイトのロレンツォが残念ながら欠場の報。地元の期待はDani PEDROSAの背中にかかる。
どちらも本当に楽しみ。
1カ月は、仕事もさることながら寝不足の日々が続く予定。
あの予選の走りを見れば、それは誰の目にも明らかだったろう。
彼はただひたすら、マシンを駆ることを楽しんでいた。そして誰より速かった。
彼のマシンの後を、必死で追うマシンたちがいる。彼のラインを、ムジェロの走り方を盗み取ろうとするかのように。
King of Mugello―その名にふさわしい彼の存在。どんなときでもムジェロで彼が負けることはない。
イタリアという国と日本は、物理的な距離こそ離れてはいるものの、非常に共通点が多い。
半島と島国という違いはあれど、周囲を海に囲まれ、魚介類を多く食べる。タコを食す文化は実は少なく、イタリアと日本はその数少ない文化を持つ国だ。
ローマ皇帝が権勢を振るい、ヨーロッパの広くを治めたこともある。ルネサンス発祥の地は、今も歴史や伝統を感じさせる建造物も多く、名だたる芸術家を輩出した。今ではブーツ型の半島でしかないイタリアだが、ふとした瞬間のちょっとした部分に、その凄みを感じることもある。
そんなイタリア、という国を、私はとても好きだ。
サッカーだけは、オランダを一番に思っているけれど。
Valentino ROSSIは、母国グランプリでは必ずスペシャルなヘルメットを用意する。昨年のヘルメットには大きな赤いハートが描かれていた。
今年の“ムジェロ・スペシャル”は、彼本人の顔がそのまま描かれるという奇抜なデザイン。頭頂部に目を見開いて、口を開けたヴァレの顔…彼曰く「これは最終コーナーでブレーキングするときの僕の顔」だそうだ(そりゃまたすごい)。ヘルメットだけを見ても唖然とするしかないようなデザインなのに、それを被ってマシンを走らせるとなると―。
誰もがポカン、と口を開け、呆然とするしかない光景が現れた。どんな気持ちでそのヘルメットを被り、サーキットを走っているのか。愛しい存在は、ムジェロを埋め尽くす黄色い波と世界中にHappyな光を振りまいた。
「久しぶりすぎて、前にポールポジションを取ったときのことを忘れちゃいそうだよ……1年ぶりだね」
通算50回目のポールポジションを獲得したプレス・カンファレンスで、ヴァレはそうコメントした。彼自身、ポールポジションというものにそれほどのこだわりがあるわけではないだろう。観ている私はいつもそう思っている。プラクティス含め、彼はレースのために走っている。最高のセッティングを見つけるための時間だ。レースが始まるまでのすべては。
美しく走り、それを楽しむ―その結果にタイムがある。贅沢で傲慢な感覚なのかもしれない。けれどヴァレにはたぶんそれだけのことだと思う。
慎重にスタートを切り、いつもと変わらず5、6番手で最初のコーナーを迎える。ポールポジションは1年ぶりでも、ホールショットは観たことがあるのかないのか。
それでも今季は早い周回で先頭に立つ。早く思い通りに走らせてくれ、とばかりに4周目にはトップに立った。
相手は昨年の強敵赤いマシンのケイシーと、今シーズン、ヴァレより先に表彰台の頂上に立ったダニ。特にダニのマシンはミシュランの復活も顕著で速い。表彰台の常連はムジェロを終えた時点で、チャンピオンシップポイント2位につけている。
決して気を抜ける相手じゃない。追われるプレッシャーは、さしものヴァレにもあるだろう。それでも彼の前には誰もいないサーキットだけが横たわる。好きにしていい、と囁いているかのように。
だから彼はただそれだけを楽しむ。相手はもうダニでもケイシーでもなく。
昨年のムジェロで彼は、超然とした走りを見せてくれた。ヴァレにしかできないパフォーマンス。手を伸ばすことすらためらわれる背中。言葉にならない。まとうオーラに誰もが圧倒されたムジェロ。彼のためにしか存在しない、とそれがすべての真実であるように感じた時間。あまりの鋭さに少しの躊躇いと感嘆。目を離せなかった。不安ではなく、あまりのすごさに。
今年もそうなるのだろう、と思っていた。上海、ル・マンと連勝して帰るイタリア。スペシャルなヘルメットを用意して戻るムジェロ。どうしても負けられない決意。絶対に勝ってほしい期待。
ムジェロ・スペシャル―そのとおりの結末。
あのヘルメットで負けるわけにはいかない(笑)
誰より速いヴァレ。
誰よりも楽しんでみせた。
いつでも彼は、レースを心の底から愛している。
その愛が伝わってくる。その愛を返したいと思う。
ただそれだけの愛しさ―
連戦のカタルーニャでは、スペシャル・マシン“アズーリ”が登場する。
土曜日に開幕するユーロ2008。アズーリは“死のグループ”と呼ばれるグループCに入っている。初戦のオランダ戦を前に、ヴァレはアズーリを勝利に導く(らしい)。
ここでだけは―死ぬほどオランダを応援する私だけど……
カタランはスペイン。スペインもユーロ2008に出場している。
熱狂的なサッカーファンの多いスペインで、“アズーリ”の運命やいかに!?
チームメイトのロレンツォが残念ながら欠場の報。地元の期待はDani PEDROSAの背中にかかる。
どちらも本当に楽しみ。
1カ月は、仕事もさることながら寝不足の日々が続く予定。
ちゃんと睡眠とってくださいね^^
by 真夏 (2008-06-10 09:42)