映画のススメ 『スライディング・ドア』 [FAVORITE THINGS]
映画はわりと好きだが、最近はあまり観ない。映画館に行くこともほとんどないし、レンタルビデオ屋の会員カードもない。以前は何枚か財布の中に入っていたけれど、1年後の更新をことごとくすっぽかし、次々と切れては姿を消していった。
借りに行くのは楽しいのだが、返しに行くのが面倒になる。返しに行ったついでにまた借りてくればいい、と言う人もいるだろうが、そんなにも観たい作品が目白押しにあるわけではない。
1週間で1本400円かそこら。安いと言えなくもないが、その1週間で何度観るか、と言われれば、おおかたの作品は1度観たら終わりだろう。3本借りたら漱石が飛ぶ。そうなると今度は妙に高く感じてしまうのだ。
自己矛盾もはなはだしいが、すぐに返しに行くのが面倒だから1週間借りることにする。せっかく1週間借りるのだから1本では足りないと思ってしまう。借りるのも返すのも行動は1度なら、同時に何本か借りる方が得した気分になるからだ。
棚の間をゆるゆると歩いているうちに、目についたタイトルを手に取る。ほんのりと納得した後、ふとアタマを過ぎるタイトルや好きな俳優の顔、名前。―『ああ、あれ観たかったんだっけ』
結局3本ほどを持ってレジへと向かう。そして漱石が飛べば、やはり高いと思うのだ。
そんな私にはケーブルテレビが合っている。
少し前にpittsさんが映画の話をされていた。
たまには映画の話?
最新ロードショーの話ではなくてただの昔話だけど。
1999年から2002年くらいにかけて、ものすごい本数の映画を見ていた時期がある。まあ映画といっても映画館のそれじゃなくてレンタルビデオ。でも5.1chのサラウンドにプロジェクター+80インチスクリーンで、部屋で見ると言ってもそれなりに充実した環境だった。
この記事にコメントした『スライディング・ドア』を観た。グウィネス・パルトロウとジョン・ハンナの競演で、アメリカ=イギリス映画の恋愛物だ。
ハリウッド大作も嫌いではないが、イギリス映画は2割増しである。基本的にヨーロッパ映画が好きだ。フランス映画もよく観た。これでも仏文卒である(←関係ない)。
ヒュー・グラント主演の『フォー・ウェディング』で、とても印象的な役を演じていたジョン・ハンナに惹かれた。ヒュー・グラントには『モーリス』でウットリしたが、当時は『アナザー・カントリー』のルパート・エヴェレットの方が圧倒的に好きだった。
.....共通点を探さないように。
ストーリーの面白さにも惹かれるが、人物の何気ないしぐさや言葉に思わずグッとくることがある。一瞬でも忘れられないのだ。囚われるように、そのシーンだけがエンドレスでアタマを回る。
ヘレン(グウィネス)はジェリーというろくでもない男と付き合っているが、ある日会議に遅刻して、さらに会社をクビになってしまう。傷心の帰り道、地下鉄のドアが閉まろうとするタイミングに彼女はめぐり合う。
地下鉄に滑り込めたヘレンと、乗りそびれたヘレンの運命が同時進行で展開される。
地下鉄でジェームズ(ジョン・ハンナ)と出会うヘレン。お互いに惹かれあい、彼女の人生は好転していく。仕事も成功し、ジェリーのどうしようもなさにキッパリと別れを告げる。
乗りそびれたヘレンは、とりあえずの仕事にウェイトレスを始め、恋人のジェリーの不審な行動に疑いを抱きつつも、ずるずると付き合ってしまう。
パーティの夜、ジェリーが未練タラタラ、ヘレンに会いに来ているのをジェームズは目撃してしまう。ヘレンがジェリーと話すために会場の外に出るのだけれど、それを窓越しに見ながら、ジェームズが隣に立つ友人にポツリとこぼすひと言。
『ヘレンのことが好きなんだ。どうしたらいいんだろう?』
このひと言で、相当マワれる。
とある小説でも出てきたセリフ。『好きなんだ。どうしたらいい?』
小説では、彼は好きだ、と告白した本人に聞いていたけれど、なんていうかこう…後先構わず、恋に落ちてしまった!!という気持ちが、パーンと出ていて、ウットリする。
悩むジェームズは、ジェリーの存在が気になってしまい、パーティの後、仕事の都合もあったけれど、ヘレンに連絡することができずにいる。
同じようにヘレンも、ジェリーが訪ねてきたことを見られたこともあり、自分からは電話できない。毎晩、鳴らない電話を眺めてはためいきをつき、同居の友人に『ジェームズから電話なかった?』と聞かずにいられない。
受話器を取り上げて、ダイアルを回して、ジェームズの会社名を応える声が流れた瞬間、電話を切ってしまったり。彼の会社のビル入口まで行って、受付嬢の澄ました顔を見て踵を返す.....。
“どうしたらいいのか”わからないのは、ヘレンも同じようだけれど、それでも“彼に会いたい!”という気持ちはハッキリしていたから。
彼女はジェームズの立ち寄りそうな場所、ふたりで行った店などを歩いて回る。やっぱり会えないのかな、と思ったそのとき(まあ、お約束ですが)、バッタリと出会うふたり。ドアの前、ぶつかりそうになる。
『元気?』と、ふたりで同じ問い。探していたヘレンにも突然だったけれど、探されていたジェームズにはもっと突然で、アタフタと言い訳にも見えそうな言葉を話しだす。
ヘレンは、ジェリーの浮気でイタイ目に遭っているから、出張だ、と言って連絡のなかった彼を、すぐにはすべてを信じられない。どこか疑わしげな瞳で話す彼を見つめている。
そんな彼女の視線を感じながら、ジェームズは話す。『電話を…。かけようと何度も思ったんだ。受話器を上げて、ダイアルを回したんだけど…。でも、彼がいるんじゃないか、と思って。それで、電話が、なかなか…』
そんなジェームズに、ヘレンはジェリーとの仲は完全に終わっていて、全く関係がない、と言う。ふたりの間に初めてきちんとお互いの好意が伝わる瞬間だ。
それからジェームズの携帯電話のベルが鳴るまでの短い間。ジェームズの浮き立つような空気が、たまらない。“Happy!!”のオーラが飛びまくっている。
ああ、なんか。ここからまた誰かに恋するのもいいかもしれない。
そんなふうに思う。
グウィネスは置いといても、ジョン・ハンナは若くない(1962年生まれ)。そのジョン・ハンナ演じるジェームズがかわいくてしかたないのだ。“ワカモノの恋愛”は、自分がもうとうにその年齢を過ぎているから、というヒガミ根性が多数あるとしても、なんかちょっと食傷気味だったりしている。
若くないからオトナ、というわけでは決してないが、斜に構えたところもなく、肉欲に溺れるわけでもなく、カッコつけるわけでも全然なく。
ただひたすら。『好きになってしまった!』というのがいい。
というかたぶん。
いい年したオトナのオトコが、オタオタしてるのを見るのが好きなんだろう。
かわいいなあ、と思うのだ。
映画のオチとしては、“新しい人生が始まる”
私は前向きに考えている。ダメだ、という人もいたけれど。
ストーリーよりも、ジョン・ハンナ。
彼の素敵な“恋するオトコっぷり”を堪能できればそれでいい。
うあ、フォー・ウェディング懐かすぃ♪
お葬式のシーンで朗読された詩がすごくいいです。
by pitts (2007-02-09 14:30)
pittsさんてば。
さすがだわ。お葬式のシーンは覚えているけれど、詩がどうだった、というのは全然記憶にないわ。確か『フォー・ウェディング』、なぜかセル・ビデオでうちにあったの。どこ行っちゃったんだろう…。
ちょっと探してみる。あったら、また観ちゃおうかな。ヒュー・グラントが、ちょっと抜けててかわいいんだよね。パンキッシュな彼女もキュートだった。
ジョン・ハンナも優しい空気で、すごくよかった。彼はイギリスのテレビドラマで刑事役とかやってるんだけど、そのドラマはシリアスで、へヴィなんだよねえ。柔らかさはなくて、やっぱり『フォー・ウェディング』な彼が好き。
最近は映画観てないの?
ワタクシ、今月こそッ!!『メゾン・ド・ヒミコ』をケーブルでゲットするわッ
by 柊なお (2007-02-10 01:43)