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オランダ対コートジヴォワール [FOOTBALL]

 不安が的中した2戦目だった。コートジヴォワールは強いと、楽な相手では全くないと初戦を観て感じた。さらに愛するオラーニエは、セルビア・モンテネグロの堅守に阻まれ、自分たちのサッカーをできずに終わった。勝った、とはいえ、どうやって勝ったのかを納得できる結果ではなかった。危ない、と思っていた。短い時間の中で、どのぐらい彼らが変わってくるのか、を不安と期待のないまぜになった気持ちで待っていた。変わっていなければ、この試合を勝つことは難しいと思っていた。落とすようなことになれば、待ち焦がれたワールドCの舞台も、3戦で終わることになる。

 コートジヴォワールは、私が今まで観てきた中でも最強にタフなチームだ。体力だけではない。気持ちも相当に強い。初戦のアルゼンチン戦を負けたことがショックで、ひどく落ち込んだ選手が多かったという。勝ちたくて、勝てる!と思って臨んで、それができずに負けたことが悔しくてたまらなかった、というのだ。ありえない話だ。なぜ、そんな強い自信を持てるのか。どんな根拠なのか。相手はアルゼンチンだとわかっているのか。名前を知っているという程度なのか。水色のストライプが、どういう存在なのかを理解していなかったのか―。

 それを聞いたときには唖然としたが、彼らのその気持ちの強さが力を生むのだ、と感じることになる。
 負ける謂れはない、と。オランダだろうがアルゼンチンだろうが、サッカーをプレイするのは同じこと。遠慮することなんて何一つないんだ。猛然と前へと攻め込むコートジヴォワールの勢いに、押された方が負けなのだ。

 身体能力は高く、力もある。気持ちも強いが、技術的にまだ拙いところがある。タフさに勝り、気持ちが引かない。すばらしい要素だが、その気持ちが、相手を止められないときに、無理に体を動かしてしまうことがある。ファウルだ。アルゼンチン戦もそうだったが、いい位置でのFKを与えてしまう。暖気が終わり、さあ、これからエンジン全開、というような時間帯に、ふかし気味のアクセルが暴走してしまう感じだ。止められない。
 23分、ファンペルシーが直接決める。コートジヴォワールにとって、自らが撒いた種であったとしても、またもや先制ゴールを許した、というのは、彼らの強い気持ちの上には腹立たしく、また納得のいかないことだったのだろう。ガックリはこないが、カーッとなるアタマに足元が狂う。うまく切り替えられないまま、今度はニステルローイに追加点を入れられた。

 オランダにとって待望のエース・ストライカーの得点だ。この1ゴールは大きい。ルート自身にも本当に大きな、意味のあるゴールだったろう。決めるべき存在が、しっかりと点を取ることで雰囲気は高まる。いい方に向かっていける。

 私にとっても。嬉しい1点だった。追加点、という、この試合においても大きかったし、ようやく形を作れた、と思えた。初戦の苦々しさが薄れていくのを感じた。



 そして本当の苦しみはここから始まる。
 前半に2得点。それもルートのゴールを含んでいる。流れはいい方へ向かうはずだ。もっと楽になれるはずだった。しかし、諦めない、タフさに勝るコートジヴォワールの底力が徐々にオランダを追い始める。2点取られたことで、彼らはもう失うものはなくなった、とばかりに前へと出る。
 押された。
 アルゼンチンは前半の45分は完全に主導権を握っていた。波を渡すことはなかった。いなし続け、貫禄を見せつけた。オランダにはそれができない。いい意味でも苦しい意味でも、オラーニエはまだ若かった。強い気持ちで一気に来られて腰が引けた。

 38分、コートジヴォワールが1点を返す。
 ぐうの音も出ない。力強いゴールだった。勝っているのに、まるで追いつかれたような空気になってしまう。オランダは完全に守勢に回った。前半終了のホイッスルに救われる。

 後半はもう見ているのがつらくなるようなシーンの連続だ。コートジヴォワールのサッカーは強く、速い。マークは外され、スペースに走り込まれ、いつ失点してもおかしくない状態になった。セットプレイの精度は、さすがに欧州の強豪国とはレベルが違い、フリースローが入らないシャックに対して、わざとファウルをするように、流れを止められないのなら、セットプレイに変わるファウルで止めてしまえ、の形になる。
 ペナルティエリアのすぐ外で何とかボールを奪っても、そこからのオフェンス転換が遅く、小さい。中盤を抑えられ、前にボールが渡らなくなった。この試合、目立つことのなかったスナイデルに代えて、ファンデルファールト投入も劇的な効果を呼ばず、ルートはもちろん、ロッベンの名前すら聞こえなくなった。






 初戦と2戦目と。
 彼らは連勝した。勝ち点6を手に入れ、アルゼンチンと同じく最終戦を待たずして決勝トーナメント進出を決めた。
 2戦目の内容は、きっとたぶん褒められるものではないだろう。それでも私は。初戦よりずっと良くなった気がした。成長した、と感じた。ディフェンスはガタガタになっていたけれど、同点ゴールを許すことはなかった。いつ決められてもおかしくない状況だったと言われても。私は、よく頑張った、と褒めてあげたい。苦しいゲームをして、彼ら自身は納得できない、嬉しい試合ではなかったとしても。
 本当によくしのぎ切ったと思う。自信を持っていい。コートジヴォワールは、今大会でタフさにかけてはナンバー1だ。そして、彼らの超のつく身体能力の高さ。ボールに対する体の動き方、普通じゃない。ヨーロッパではお目にかかれないチームだ。アルゼンチンすら後半は押されていた。苦しいゲームを戦い抜いたこと、若いオラーニエには何よりの経験になる。今大会はそういう大きな値を手に入れられる絶好の舞台なのだ。信じられる。彼らはもっと強くなる、と。

 “死のグループ”は、2チームが連勝で決勝トーナメント進出を決めた。勝ち星をそれぞれに献上することになったコートジヴォワール。ほかのグループに入っていたら―。
 荒削りで、まだまだ一直線だ。曲線を描けるようになるときがくる。近い将来に。そのときに。
 オランダも、また最高に美しくあれればいい。


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