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セルビア・モンテネグロ対オランダ [FOOTBALL]

 サッカーが好きだ。

 改めて思う。
 美しいスポーツだと、心から感じる。
 そして不思議な、どうしてこんなにも囚われてしまうのだろう、と思う。
 結果を知ってしまっても、ビデオにダビングしたゲームを観よう、と思う。
 というより、生中継で観られない試合を、ダビングしてまで観よう、そして保存までしておこう、などと思うことが、それを普通のことのように感じている、なんとも思わないでいる自分や弟が、とても不可解に感じる。リアルタイムじゃなくちゃ、スポーツなんて結果を知ってしまったら、観る意味半減じゃないか?

 わかっているようで。
 わかっていないのかもしれない。



 サッカーは不思議だ。
 なぜ、こうも、囚われてしまうのか。惹き込まれてしまうのか。
 眠らなくてもいいのなら。すべてのゲームを観ていたい、と本気で思っている。
 ずっとずっとサッカーが、続いていくといいと思う。





 私はオランダが大好きだ。
 アヤックスが大好きだった。
 彼らが私に世界を見せてくれた。
 悲しいことにアヤックスは、その後メンバーをほぼヨーロッパ中にバラまくことになる。
 だから私は、彼らといっしょに、世界を観ることができたのだけれど―。


 ずっとずっと。
 オランダが世界一になることを夢見てきた。
 ワールドカップでも、ヨーロッパ選手権でも。すべてのゲームでオランダを思っていた。
 ことごとく。叶わずに終わった。






 『2006年ドイツで会おう!』
 口さがないオラーニエたちは、そう言って2001年を終えた。翌2002年の舞台に、オレンジ色は見えなかった。

 惨敗はしないけれど、圧倒的なパフォーマンスを見せつけることもなかった。普通に“強豪国”ではあった。ヨーロッパ選手権では、母国でもポルトガルでも決勝トーナメントに進んだ。悪くはなかった。でもただそれだけだった。
 毎回のように『優勝候補』と言われた。何を根拠に?と、腹立たしく感じることの方が多くなった。FIFAランキングの高さにも、うんざりしていた。私の前で、彼らはまだ、美しいサッカーを見せてくれていない。






 勝つには勝った。勝ち点3を手に入れた。事実だ。アルゼンチンも勝った。最終戦は彼らと決戦だ。初戦を取る、ということの意味は大きい。とりあえずこの段階で、オランダはアルゼンチンと並んでいる。
 でも足りない。よかった、とはどうあっても言えない。ロッベンのすごさばかりが際立ったようだ。印象は強いだろう。けれど、オランダというチームの中で、彼ばかりが目立っているのは明らかにおかしい。縦のラインが入っていない。寸断されているように感じる。左サイド偏重気味なのは、ロッベンばかりにボールが行っているからだ。彼が右に走れば、ボールも一緒に動いたが、それでは何の意味もない。次の試合、ロッベンには執拗なマークがつくだろう。コートジヴォワールには、彼の頼もしい同僚、ドログバがいる。
 振り切れるか。タフさに勝るコートジヴォワールを相手に、また一人で突破しようとするのか。そしてそれをゴールへとつなげられるのか。


 セルビア・モンテネグロは旧ユーゴスラヴィアだ。ユーゴのサッカーに魅せられていた私は、セルビア・モンテネグロのサッカーも楽しみにしていた。決して弱いチームではないことも知っている。ユーゴスラヴィア解体後、どんな思いでここまで来たのか。モンテネグロの独立が発表された今、彼らがこの名前でワールドCの舞台に上がるのは、これが最初で最後になる。どんな気持ちでピッチに立っているのか。想像することすらできない。彼らの気持ちに、あまりにも遠い。
 彼らの次に大いなる期待を。彼らの前に新たな扉が開かれるといいと思っている。とても難しいことだとしても。





 ニステルローイの仕事は、ゴール前でどんな形であれボールをねじ込むことにある。マークがきつかろうが、ピッチがどんな状態であろうが、そんなものは関係ない。そういう役割なのだ。オレンジ色のユニフォームを着て、得点王候補に挙げられる立場なら弱音を吐いている場合じゃない。
 何としてでもマークを振り切らなくてはならない。できなければ、そのまま押し込むしかない。ロッベンが何度も自分で切り込んだのは、ルートに出せない、と思ったからだろう。それでもロッベンはルートにボールを出すべきだったし、ルートはそれを受けるための動きをするべきだった。
 18分にオフサイド、ギリギリの飛び出しからロッベンが決めた。ファンペルシーからのボールを、ロッベンは真ん中で受けた。GKと1対1になり、ディフェンダーが後ろから迫ってきていたが、落ち着いてシュートした。すばらしいゴールではあったが、仕事をする場所と人間が違った。ルートが決めてくれていたのなら、同じ1ゴールでも、もう少し違う感想を持てたかもしれない。




 大多数の人は、ロッベンの仕事を褒めるだろう。ゴールを決めたのだから。評価されてしかるべきだ。孤軍奮闘、という言葉も聞かれた。けれど私には彼の孤軍奮闘ぶりは、セルフィッシュにしか見えなかった。どうして出さないの?と、何度も思った。相手ディフェンダーに当たってCKを得ても、その気持ちは変わらない。おかしい、と思い続け、勝利に心から喜べずにいた。
 オランダを大好きなのに。ホッとして当然なのに。チェコ戦を落として泣いた、あの夜明けと何が違っているのだろう―。








 心配されていたのはセンターバックの存在だった。
 大丈夫!と太鼓判は厳しいものの、合格点の範囲だろう。ファンデルサールの足はどうなのか。
 アルゼンチン戦で観たコートジヴォワールの評価は高い。このままでは厳しい。タフさではセルビア・モンテネグロ以上だ。ドログバを抑え、そして相手を振り切るオフェンスを見せてくれるだろうか。信じるしかない。


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なべ

この試合は本当にロッペン、ロッペン、ロッペンでした。
確かにオランダ独特の美しい攻撃サッカーは封じられましたね。
とはいえ、相手はドイツW杯参加国でも1、2を争う守備力を誇るセルビア・モンテネグロだったのも忘れてはならないと思います。
彼らの献身的とも言える守備は随所に光ってました。
オランダはあのディフェンスを破っただけでも凄いのかも……。
by なべ (2006-06-15 01:49) 

柊なお

 オランダについては、本当に大好きで自分がオランダ人でないのが不思議だし、それを考えるとすごく悲しくなるぐらいのおバカさんな私です。美しいサッカーを見せてくれていたし、期待してしまう。それはもうオランダ人と同じ気持ちで。
 なので、ついつい厳しくなります。もっと!と思ってしまうのを止められない。点取り屋が点を取れないと、この先も厳しいし、ルートが決めることで乗っていける部分も大きいので、私にとっては彼だったです。

 旧ユーゴであるセルビア・モンテネグロに対して、たぶん相性は悪くないはずだ、という気持ちも後押ししたかな。その予感が外れちゃいました。
 コートジヴォワール戦については、これからじっくり、です。
by 柊なお (2006-06-17 05:01) 

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